日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: G111
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9種の落葉広葉樹における道管形成とフェノロジーの関係_-_環孔材と散孔材との比較_-_
*高橋 さやか野渕 正岡田 直紀
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抄録

 広葉樹には、年輪形成の初期に径の大きな道管をつくりそれ以後小径の道管をつくる環孔材樹種と、比較的小径の道管が年輪内に一様に分布する散孔材樹種とがある。年輪内における道管径の大きさと分布のこのような違いは、水輸送の効率の違いとして、樹種の成長様式と密接に結びついていると考えられる。そこで本研究では、温帯の落葉広葉樹9樹種(環孔材4樹種と散孔材5樹種)について道管形成と開葉の時期を調べ、道管の配列とフェノロジーの関係について検討した。
 京都大学附属芦生研究林で各樹種の幹の成長錐コアと枝を開葉前から2週間ごとに採取した。これらの試料の顕微鏡観察により当年の最初に形成された道管(first vessel)の木化完了時期を調べ、開葉時期との関係を環孔材樹種と散孔材樹種とで比較した。
 その結果、環孔材樹種では開葉とほぼ同時期に幹および枝のfirst vesselの木化が完了した。一方、散孔材樹種では開葉後まもなくまず枝のfirst vesselの木化が完了し、次に開葉後1ヶ月以上してから幹のfirst vesselの木化が完了した。また、環孔材樹種より散孔材樹種の方が全体的に開葉時期は早かった。
 以上の結果から、散孔材樹種では開葉後に枝から幹へ徐々に道管形成を行うのに対して、環孔材樹種では散孔材樹種に遅れて開葉するが、それと同時に散孔材樹種より大きな道管を形成することで、より多くの水輸送を可能とし、その後の成長を有利に進めることができると考えられる。

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© 2005 日本生態学会
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