日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: C211
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鳥類による赤白果実の選択とその選択基準
*辻田 香織境 慎二郎菊沢 喜八郎
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抄録

液果は主に果食性の鳥類に食べられその種子を散布される。液果は赤色と黒色のものが多数を占めており、この二色の優占は鳥による選択圧のもとに進化したと考えられることが多い。しかし、室内実験において鳥は一般に赤色と黒色を好む傾向にあるが、果実の色について多形性を示す植物自然個体群においては形質間で果実の被食率に差が見られないなど、果実の色が鳥による果実の選択に及ぼす影響はまだよく理解されていない。
本研究では、鳥の野外における色の異なる果実に対する選択とその基準について示す。赤色の果実をつけるウメモドキIlex serrataとその品種で白色の果実をつけるシロウメモドキI. serrata f. leucocarpaを隣り合わせて6地点に植え、1)果実を採食する鳥種及びその採食頻度、2)各鳥種の果実の選択性および3)その選択基準について調査を行った。
調査2品種の果実の主要な採食者はヒヨドリであり、観察された採食の約9割を占めていた。その果実の選択性は地点によって異なり、果実の色との間に一貫した傾向は見られなかった。ヒヨドリの採食に大きく依存する果実の被食率が果肉の糖分含量とのみ有意に相関していたことから、ヒヨドリの果実の選択基準は糖分であったと考えられた。一方、ヒヨドリ以外の鳥種、メジロ、ジョウビタキ、ルリビタキ、シロハラは赤色果実を選ぶ傾向にあり、色に基づいて果実を選択していたと考えられた。以上の結果から、採食頻度の高い鳥は果実の特質について学習し色ではなくその特質に基づいて採食を行いやすいが、採食頻度の低い鳥は色を基準に赤色や黒色の果実を選択しやすいことが示唆された。

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© 2005 日本生態学会
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