日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: F212
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衛星による植生指標を用いた熱帯林のBiomass推定
北山 兼弘清野 達之*中園 悦子オン ロバート
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抄録

 広域の熱帯雨林のBiomass推定は、地上調査のみでは困難である。そこで衛星からのデータを用いて、熱帯雨林のBiomassを推定する手法について考えた。マレーシア、サバ州の低インパクト伐採林であるデラマコット、従来の方法での伐採林のタンクラップ、原生林、の三種類の森林を対象として、Biomassの推定を行った。
 まず反射スペクトルから指数を作成し、地上調査からのBiomass値と比較したところ、近赤外域光(IR)と中間赤外域光(MIR)を組み合わせた指数(NDSI)が最も適していることがわかった。この指数は葉の水分含有量に関連した値であるとされており、次の式で算出される。
  NDSI=(IR-MIR)/(IR+MIR)
 しかしこの指数は、Biomassが一定値を越えた場合に飽和することがわかった。また、樹冠の状態が似ている低インパクト林と原生林に対し、重度の伐採が行われている林分では、同じ推定式ではBiomassが過剰に推定されることがわかった。
 そこで画素ごとに樹冠の多様度を示す値F(n)を定義した。この値は次のように定義される。
1:対象画像の植生域に対して教師無し分類を行い、最大256クラスに分類する。
2:対象画素を中心としたn×n画素の中に幾つの異なるクラスがあるかを数え、その値を  F(n)とする。
 この値を上記の三種類の森林から算出したところ、F(n)の値は原生林、低インパクト林、重度の伐採林、の順に大きくなった。これは、伐採によって樹冠の状態にばらつきが生じていることに対応している結果である、と考えられる。そこでこの値を用いてNDSIによる推定値を補正したところ、より適切なBiomass推定値が得られることがわかった。

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© 2005 日本生態学会
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