富士山北東斜面1000m付近には溶岩の影響により、土壌の発達段階の異なる森林が存在する。土壌の未発達な森林では、森林の成長量は無機態の窒素などの土壌の栄養塩類によって制限されていると考えられる。本研究では土壌発達段階の異なる3つ森林における純一次生産量(NPP)と無機化速度の関係調べることを目的とする。発達段階の異なるサイトとして、剣丸尾溶岩流(西暦937年)上にあるアカマツ林、長尾山溶岩流(西暦864年)上のヒノキ、ツガ林、大室山溶岩流(2850年前)上のミズナラ、イヌシデが優占する落葉広葉樹林で調査を行った。
NPPは、DBHからアロメトリーによって求めたバイオマスの増加と、リタートラップをもちいて求めた枯死脱落量の合計として測定した。無機化速度はポリエチレンの袋に深さ5cmまでの土壌を入れて約1ヶ月現地にて培養して測定した。その他に土壌の特性として、pH、無機態窒素濃度、可給態リン濃度、全窒素、全炭素を測定した。
アカマツ林では土壌の深さは8.5cmと浅く、8月の土壌では、pHは4.24、無機態窒素濃度は74.9mg kg-1であった。ヒノキ、ツガ林の土壌の深さは15.1cmであった。pHは4.68、無機態窒素濃度は135.7mg kg-1であった。落葉広葉樹林の土壌の深さは70cm以上だった。pHは5.63、無機態窒素濃度は89.3mg kg-1であった。アカマツ林では無機化速度もNPPも低くかった。ヒノキ、ツガ林と落葉広葉樹林では無機化速度は落葉広葉樹林で高かったが、NPPは同じ程度であった。この結果について考察した。