日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-072
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大規模撹乱後に一斉更新したシラビソ・オオシラビソ林の空間構造と成長動態
*鈴木 智之鈴木 準一郎可知 直毅
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抄録

1959年の伊勢湾台風によって林冠が大規模に破壊された北八ヶ岳のシラビソ・オオシラビソ林の構造と動態を解析した。1980年にKimura(1986)らにより設定された4×4-8×8 m2の4調査区を2004年にそれぞれ50×50 m2に拡大し、樹高50 cm以上の全個体の座標を記録した(一部未測定部分を含む)。座標を記録した全個体の胸高直径(DBH)もしくは地際直径と、一部の個体に関しては樹高および過去4年分の樹高成長を測定した。測定は、2004年の6月から11月に行った。 調査区内のほとんどの個体はシラビソもしくはオオシラビソであり、胸高断面積合計の90%以上をこの2種が占めていた。樹高200 cmに満たない稚樹では、全調査区でオオシラビソの個体数が最も多かった。一方、樹高200 cm以上の個体では全調査区ともシラビソがオオシラビソよりも多かった。DBHおよび樹高のサイズ構造には、両種の間に明確な違いが見られた。シラビソでは、DBHのサイズ分布は一山型、樹高のサイズ分布は逆L字型を示した。オオシラビソでは、DBHのサイズ分布はL字型、樹高のサイズ分布はL字もしくは二山型を示した。 L関数により個体の分布様式を解析した。解析にあたって、全木をDBHに基づいて小木、中木、大木に分けた。どの調査区でも全木は集中分布を示した。小木および中木は全木の分布と比べて集中分布していたが、大木は全木の分布よりも一様に分布していた。 小木・中木の多くはすでに樹高成長をしておらず、林冠を占める大木による被陰が続けば枯死する可能性が高い。大規模な撹乱やそれに続く多数の実生の定着が起こらない限り、全木の分布パターンは現在の大木の分布パターンに近づき一様分布となると予想される。

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© 2005 日本生態学会
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