日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S9-4
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落葉性林冠下の常緑広葉樹稚樹の冬の光合成
*宮沢 良行菊澤 喜八郎
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抄録

上層の落葉樹は下層に季節変化する光環境(春-秋の弱光と冬の強光)を創り出す。弱光下の春-秋に光合成生産が制限される常緑下層樹木にとって冬の強光下での光合成生産はその生長を左右するほど重要であると考えられる(Harrington et al. 1989)。しかし寒・冷帯や地中海気候に生育する常緑樹の場合と異なり温帯常緑広葉樹の冬の光合成については不明な点が多い。実測例が少ない上に冬の低温での光合成速度に影響を及ぼす光合成速度の温度依存性と葉の光合成に関わる諸特性が不明だからである。葉の光合成特性は種によって異なり時間変化する。特に光利用量が急激に変化する環境において植物は葉の光合成特性を馴化させてその光環境で効率的に光合成しようとすることが知られている。また光合成速度の温度依存性も種や生育環境によって異なる。常緑広葉樹の冬の光合成を理解するためには冬の間の環境条件と共に葉の生理学的特徴によって光合成を決定されるプロセスを理解する必要がある。 本研究は温帯落葉樹林下層に共存する常緑広葉樹6種の稚樹を用いて光合成とそれに関わる植物の生理学的特徴を一年を通して継続的に調べた。第一に季節変化する環境下で光合成速度を測定して冬期の光合成生産の種間比較を行い、また年間光合成生産における重要性を解明した。第二に冬の光合成速度の種間差や季節変化パターンを生み出す要因として光合成速度の温度依存性と葉の光合成能力(同一温度条件での光飽和での光合成速度)に注目して夏以降定期的に測定した。その中で季節的な光環境の激変に対する葉の生理学的特徴の馴化に注目して検証を行った。これらのデータをもとに野外での光合成速度の季節変化パターンと種間差を特徴づける生理学的特性とその生態学的背景を明らかにした。

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© 2005 日本生態学会
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