日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P2-138
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円網性クモにおける網場所移動と網糸投資との関係
*中田 兼介森 貴久
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抄録

円網性クモは網を定期的に張り替えるが、その際にしばしば網の大きさや横糸の間隔を変える事が知られている。この現象はクモが網場所の質に応じて網糸への投資量を調節しているためであると考えられている。この調整が餌収益の上昇に結びつくためには網場所の質を知る必要があるが、クモは過去の採餌経験からこれを推定していると考えられる。この意味で円網は採餌のためのデバイスであると同時に情報獲得のデバイスでもあると言える。
一方、円網性クモは、餌捕獲量の減少、網の破壊、成長に伴う最適な造網場所の変化などの理由によってしばしば網場所を移動させる。このとき新しい網場所は過去に利用した事のない場所である事が一般的で、クモは移動直後にはその場所の質を知る事無しに、どのような網を張るかについて意思決定しているだろう。
本研究では、このようなクモの網場所移動直後の造網行動がどのようなものになるのかを、「採餌経験からの網場所の質の推定には誤差が伴うが、その誤差は網サイズが大きくなればなるほど小さくなる」という仮定の元で最適網糸投資モデルを作り解析した(この仮定を置いた理由は、網サイズが大きくなる事は、より広い空間をサンプリングする事であり、推定の際のサンプリング量の増加は推定の精度の上昇に繋がると考えられるからである)。その結果、網場所移動率が小さいほど移動直後には最適網糸投資量が大きくなる、という結果が得られた。
このような最適モデルからの予測が実際に当てはまるかどうかについて、コガネグモ科の円網性クモ数種を使い、1)野外で人為的に網を壊してやることで網場所移動を引き起こし、新しい場所に造網させた時の最初の網の総糸量、2)連続した二日間同じ場所に造網している頻度、計測し、これらのデータを種間で比較する事で検討した。

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© 2005 日本生態学会
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