日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S16-1
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河道修復事業とモニタリングの概要
*星野 義延
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抄録

多摩川永田地区では流路が左岸に固定され、河床低下が進行し、このため高水敷では攪乱頻度が低下するとともに細粒土砂が堆積し、ハリエンジュを主体とした樹林の拡大と礫河原の減少が生じていた。また、新たな礫河原ができにくくなったことから、カワラノギクなどの河原固有の生物が減少するなど本来の河川の生態系の状態とは異なる状況にあった。このため、2001年から2002年にかけて、永田地区では低水路の拡幅行い、河床の低下傾向を改善するとともに、礫河原を造成し、保全の緊急性の高いカワラノギクなどの河原固有の生物の保全を行う、河道修復計画を立案・実施した。また、低水路の拡幅のみでは、河床の低下傾向を改善するのに不十分であることが推定されたため、事業実施区間の上流部に、さらに上流にある小作堰に堆積した土砂を敷設する、土砂供給も同時に行うこととした。河道修復・礫河原造成を行った面積は2.11ha、総工事費は7700万円である。再生された礫河原は冠水頻度などに応じて4つの工区に分けて造成されている。河川生態学術研究会多摩川グループのうち、永田地区を調査フィールドとしている研究者を中心として河道修復モニタリングワーキンググループが組織され、河道修復を実施した後の生物の生息状況等についてモニタリングを進めている。調査項目は、出水後の地形変化のモニタリング、水生生物や魚類の生息状況と瀬淵構造との関係の把握、造成礫河原の植生の変遷、カワラノギク個体群に関するモニタリング、イカルチドリの繁殖状況、カワラバッタの生息状況、沿川住民の意識調査などが行われている。また、国土総合研究所の河川研究室では、事業実施区間を含む長さ7km区間の水利実験模型を縮尺1/50で作成し、過去の出水に伴う河床変動を再現し、模型実験の再現性を評価して、実施されている土砂供給の効果や河道修復後の地形変化の予測を行っている。

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© 2005 日本生態学会
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