日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P3-057
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野生メダカの繁殖スケジュールにおける緯度間変異
*齋藤 圭太山平 寿智
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抄録

変温動物では一般に,外界の温度が低いほどあらゆる代謝速度が低下するため,配偶子の生産速度も低下する.緯度に沿った環境の温度勾配も変温動物の繁殖に同様の影響を及ぼすため,高緯度に生息する個体ほど年間の繁殖率が低下すると考えられる.しかし,繁殖率は重要な適応度成分であるため,高緯度の集団では,繁殖に対する負の影響を補償するような適応が進化しているかもしれない.本研究は,変温動物における高緯度環境への繁殖特性の適応進化の実体を明らかにするため,メダカIOryzias latipes/Iをモデルシステムとして,緯度の異なる野生集団(青森および福井)間で生殖腺重量の季節変化パターンを比較した.その結果,福井の集団では5月から生殖腺重量が増加し8月まで高い値を維持していたが,青森では6月にのみ高い値を示した.これは,高緯度の集団ほど繁殖期が短いことを示している。また,繁殖盛期(6月)で比較すると,高緯度の雌ほど体重に比してより大きな生殖腺を有することがわかり,この間の卵生産速度が高いことが示された.これらの事実は,高緯度のメダカほど,どの水温環境の下でも遺伝的に高い繁殖能力を有することを示唆している.講演では,耳石による個体の齢査定データから,当歳魚の繁殖への参加についても勘案した繁殖スケジュールの緯度間変異に関する考察を行う予定である.

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© 2005 日本生態学会
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