日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S17-2
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流域の水質特性と栄養塩負荷量の算定
*三上 英敏石川 靖上野 洋一
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キーワード: 達古武沼, 窒素, リン, 農業, 湿地
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抄録

達古武沼や塘路湖等の釧路湿原内湖沼群は、近年、富栄養化の進行による環境悪化が懸念されている。その中の一つである達古武沼も水生植物の衰退、アオコの大発生などの環境悪化が問題視されている。達古武沼における外部からの栄養塩負荷の要因として、(1)農業によるもの、(2)キャンプ場に由来するもの、(3)釧路川河川水の逆流流入に伴うもの、(4)温泉水によるもの、(5)湿地涵養地域に由来するもの、など主に5種類の栄養塩負荷源が考えられる。そこで、我々は、それぞれの栄養塩負荷源における水質特性の把握と栄養塩負荷量の見積もりを行うため、様々な現地調査を実施した。その結果、釧路川河川水の逆流は、釧路川流域の降雨や融雪に伴う釧路川の水位上昇に伴って起こることや、達古武沼最大流入河川の達古武川の上流部には河道に沿って湿地帯が形成されており、そこから高濃度のリンを含む水が供給されていること等、各負荷源の特性について、様々なことが明らかとなった。達古武沼への全栄養塩負荷量は、年間、全窒素で約34トン、全リンで約3トンと見積もられた。また、各負荷源の中で、キャンプ場、温泉及び釧路川の逆流による負荷寄与は小さかった。一方、湿地涵養地域の影響を大きく受けている達古武川の人為由来でないリン負荷量が、達古武沼への全負荷量の約2割を占めていると見積もられた。それは、達古武沼のような湿原内湖沼の水質環境や生態系を検討する上で、注意すべき現象であると考えられた。しかしながら、達古武沼の集水域には、集水域面積の割に、乳牛や肉牛そして豚が多く飼育されており、それらの糞尿等による達古武沼への栄養塩負荷寄与が、かなりの割合を占めていると見積もられた。

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© 2005 日本生態学会
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