日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: A109
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Multiple stresses amelioration: 熱も衝撃も防ぎます!?
*河井 崇
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抄録

 生物群集におけるfacilitation(プラスの作用を介した種間相互作用)について,近年になりその一般性・重要性が認識されるようになって来た.Facilitationのプロセスとして,物理的・生物的ストレスの緩和,資源の供給などが,海域・陸域にかけた様々な群集において報告されている. 九州天草の岩礁潮間帯には,固着性動物であるカメノテとムラサキインコが同所的に棲息している.カメノテはムラサキインコに対して二つの異なるストレス緩和作用:stress amelioration(波あたりによる物理的ストレスの緩和,日射による熱ストレスの緩和)を与えることにより,ムラサキインコの生存・成長を促進していることが演者らの研究により明らかにされている.本講演では,季節的なストレス環境の変動に伴って,これら二つのストレス緩和作用の強さがどのように変化するかについて,野外操作実験により得られた結果を紹介する. 海が穏やかな状態が連続的に続く秋を除き,ほぼ一年を通して強い物理的ストレスの緩和作用が検出された.一方,熱ストレスの緩和作用は夏においてのみ検出され,その強さは物理的ストレスの緩和作用と比較し小さい値を示した. これらの結果から,本調査地においては,カメノテによる物理的ストレスの緩和作用がムラサキインコの生存に必要不可欠であることが明らかになった. 本研究は,同一種間における複数のfacilitationプロセスの検出,及びそれらの重要性の評価・比較を実施した,数少ない研究例の一つである.

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© 2005 日本生態学会
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