Experimental Animals
Online ISSN : 1881-7122
Print ISSN : 0007-5124
ヤセ型糖尿マウスの育種
牧野 進国本 喜久子村岡 義博水島 敬夫片桐 謙栩野 義博
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1980 年 29 巻 1 号 p. 1-13

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抄録
多尿, 尿糖強陽性を呈し, 急激な衰弱を伴い死亡した1匹の雌マウスがCTS系マウスの亜系で偶然発見された。子孫をもとに8対の交配系を作成し, 親の糖尿発症および繁殖力を指標とし, 糖尿マウスの選択を試みた。6世代にわたる選択により, 糖尿発症系 (nod) とその対照系 (non) の2系統が育成された。
nodマウスの顕性糖尿出現には著明な雌雄差が認められ, 30週令までの累積発症率は雌で80%, 雄で20%程度であった。発症は急激に出現し, 発症後は体重減少, 衰弱が急速であった。自然回復する動物はみられず, 放置すると約1~2ケ月で死亡した。しかし, インスリンを連続投与することにより, 体重増加がみられ, ある程度寿命を延長させることが可能であった。
病態の生化学的特徴としては, 多尿, 多飲, 高血糖, 尿糖強陽性, 高コレステロール血症がみられた。また, 病理学的特徴としては膵ラ氏島に種々の程度のリンパ球浸潤が認められた。リンパ球浸潤の出現は, 5週令以上の糖尿発症前期の動物にも高率に認められ, その出現には糖尿発症でみられたような著明な雌雄差はみられなかった。顕性糖尿マウスの膵ラ氏島はいずれも強い萎縮像を呈し, 島の数ばかりでなく, 島を構成する細胞数にも著減がみられた。
病因については不明であるが, 育種されたnodマウスはヒトの若年型インスリン絶対不足糖尿病のモデル動物としての使用が期待出来るものと考えられる。
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© 社団法人日本実験動物学会
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