抄録
F344/DuCrj (Fischer) 系雄ラット (Fischer: 日本チャールス・リバー) の行動面の特性を把握するため, 無条件行動として自発運動量の測定, およびオペラント条件行動としてシドマン型および弁別型回避反応習得過程の観察を行ない, Wistar系雄ラットの成績と比較検討した。12時間明: 12時間暗環境下における自発運動は, 両系統のラットとも明期に低く暗期に高い, 明暗周期に同調した日周パターンを描いた。しかし運動カウント数はFischer系ラットの方がWistar系ラットより有意に高かった (P<0.01または0.001Student's t-test) 。シドマン型回避反応 (反応―ショック間隔=30秒, ショック―ショック間隔=5秒) の訓練初期段階 (第1~第3セッション) における被ショック率は, Fischer系ラットの方がWistar系ラットより高かった (p<0.05または0.01) 。逆に弁別型回避反応 (試行間隔=25秒, 警告刺激提示時間=5秒) の訓練初期段階 (第3~第5セッション) では, Wistar系ラットの方がFischer系ラットよりショックを多く受け, 低い回避率を示した (p<0.05または0.01) 。しかし訓練の進展後では両系統間の差異がほとんど認められなかった。シドマン型および弁別型回避スケジュールにおける総反応数あるいは試行間反応数に関する系統差は観察されなかった。本実験結果はFischer系ラットがWistar系ラットと異なる行動特性を示す可能性があることを暗示している。またFischer系ラットを使用して行動実験を行なう際, 本実験で観察された様な行動面の特性を考慮する必要性を示唆している。