Experimental Animals
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無アルブミンラットにおける貧血およびカリウムの赤血球膜透過性
杉山 賢司江守 利博朱宮 正剛長瀬 すみ
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1984 年 33 巻 3 号 p. 307-318

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抄録
無アルブミンラット (NAR) における血清アルブミンの欠損に由来する症状を探求することは血清アルブミンの機能を知る上で重要であると思われる。本論文では, NARの加令 (4~52週令) に伴なう血液学的検索を行なった結果, 若干の赤血球数の低下, 網状赤血球数の増加, さらにヘモグロビン量およびヘマトクリット値の僅かな低下がみられ, NARは軽度の貧血を有する事が判明した。また, NARの赤球膜脆弱性の上昇傾向が認められた。次に, NARの赤血球膜の性質を知る目的でin vitroにおける赤血球の溶血およびカリウムの膜透過性について検討した。ヘパリン処理した血液を0℃又は37℃で保温するとNARの血液は溶血し易く, 血漿カリウム濃度が増加することが判った。また, 洗浄した赤血球をカルシウム含有の溶液中で保温すると, 時間およびカルシウム濃度に比例し赤血球内カリウムの流出が促進された。そこで, この系にラットアルブミンを添加すると, 赤血球のカリウム流出は抑制された。これらの事から, NARではカルシウムを結合させるアルブミンが欠損するため赤血球は血漿カルシウムによる陽イオンの膜透過性が昂進されている事が示唆された。
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© 社団法人日本実験動物学会
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