Experimental Animals
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新生仔期のナキウサギに認められた心室中隔欠損の自然閉鎖について
篠原 春夫西村 秀雄
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1986 年 35 巻 2 号 p. 169-173

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抄録
1974年に実験動物中央研究所に導入された新実験動物であるナキウサギを用いて実験奇形学的研究を進めるにあたり, 先づその自然発現奇形の背景値を得る試みがなされた (1983, 西村ら) 。その中で特に注目されたのは, ナキウサギにおいては心室中隔欠損が高頻度に観察されたことである。しかしながら, この値については観察を行なった研究機関によって数%から35%といった数値のばらつきがあったが, その観察法がWilson法によっている事もその原因の1つと考えられた。われわれは合計160匹のナキウサギを用いて, 胸部内臓のより詳細な観察の可能な, 1974年西村 (大日本製薬) によるBarrowの変法によって心臓観察を行ない, 併せてその心奇形の生後発育に伴なう変化についても検討した。その結果, 新生仔期には, 生存例56例中5例 (8.9%) , 死亡例34例中3例 (8.8%) に膜性心室中隔欠損が認められた。3週齢では, 生存例37例中1例のみ (2.7%) に膜性心室中隔欠損が認められた。そこで, 生後1週から3週までに何らかの原因によって死亡した33例を調べたところ, その2例 (6.1%) に膜性中隔欠損が認められたのみであった。このことから, 膜性心室中隔欠損例が特に選択的に死亡しているというより, むしろ, 新生仔期に認められた高頻度の膜性心室中隔欠損の大部分が生後発育の初期の段階に自然閉鎖するのではないかと推察された。
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© 社団法人日本実験動物学会
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