抄録
光学顕微鏡学および電子顕微鏡学的手法によって中枢神経系異常突然変異のニワトリ“Trembler”を研究した。材料としては, ふるえの症状を示す横斑プリマスロック種 (BPR) と横斑プリマスロック交配種 (CBT) の孵化後6日齢および34日齢のものを用いた。対照としては, 正常の横斑プリマスロック交配種 (CBN) のそれぞれ同日齢を用いた。BPRにおいては小脳の大きさが著しく小さいことが認められたが, 光顕による観察では, 層構成は正常個体と全く変わりがなかった。BPRの分子層と顆粒層はCBTおよびCBNに比してはるかに薄く, ブルキンエ細胞の分布が分が子層, 顆粒層および髄質に及び, それらの分布異常を認めた。また, 小脳組織のニッスル染色標本では, CBTとCBNに比してBPRは著しく強染された。電顕による観察では, BPRのプルキンエ細胞は34日齢までに萎縮し, 楕円形となり, 膨張したミトコンドリアを含み, ゴルジ装置の占める領域は小さくなり, 多くの粗面小胞体の堆積を認めた。これとは対照的に, BPRの退化バスケット細胞では粗面小胞体の堆積は減少したが, 膨張したミトコンドリアとゴルジ装置の占める鎖域は増加した、, また, 顆粒細胞は小型化し, オルガネラの数も減少した。これらBPRに認められた異常の原因はプルキンエ細胞に内在しているものと考えられる。