Experimental Animals
Online ISSN : 1881-7122
Print ISSN : 0007-5124
アルカリ溶液によるラットの子宮透明化および着床痕染色法
山田 隆大沢 浩一大野 博
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 37 巻 3 号 p. 325-331

詳細
抄録

ラットの子宮において, 胚・胎仔の着床位置を示す妊娠中のmetrial glands及び分娩後斑 (共に着床痕と呼ばれている) の観察に効果的なアルカリ溶液法について, 汎用されているTurnbull blue (Salewski法) 及びbenzyl benzoate (Orsini法) と比較し, 検討した。ラットの子宮は2%のNaOH及びKOH等のアルカリ溶液に1時間浸漬すると透明になり, metrial glands並びに分娩後斑の観察が容易となった。アルカリ溶液ではmetrial glandsは染色されず, 黄白色の球状物として観察され, また, 分娩後斑は黄褐色に染色されたが, 黄白色の球状物を伴ったものとして観察された。分娩後斑の黄褐色及び黄白色の部分は胎盤剥離後の瘢痕中の血色素鉄との反応及び妊娠中から遺残したmetrial glandsによるものと思われた。ホルマリン固定された子宮は高濃度のNaOH, KOHあるいはその他のアルカリ溶液によっても透明にならなかったが, 分娩後斑は染色された。
Turnbull blueは鉄含量の少ないmetrial glandsに対して染色効果を示さなかった。benzyl benzoateは固定あるいは無固定のいずれの子宮に対しても透明化作用を示し, metrial glands及び分娩後斑の観察を容易にしたが, 標本作製までに数日を要し, 作製された標本も堅くなり, 縮む欠点があった。ラットの着床痕の観察には子宮を透明化させる2%のNaOHあるいはKOHが簡便で最適であった。

著者関連情報
© 社団法人日本実験動物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top