抄録
塩化ナトリウムの8.5%水溶液30ml/kgをddYマウスに腹腔内投与し, 経時的観察を実施した。さらに6時間後にコロイダルカーボンを注入し脳の色素分布を観察した。ヘマトクリット, 血清浸透圧および腹水の増加が投与1時間後を頂点として認められた。コロイダルカーボンを注入されたマウス脳では基底核へのカーボンの侵入が5例中2例で著しく低下していた。脳の病理組織学的検査では投与6時時間後から海馬の錐体細胞の変性が, 電子顕微鏡的検査では微小空胞形成, ミトコンドリアの腫大および粗面小胞体の拡張が錐体細胞に認められた。以上の結果から, ヘマトクリットの増加から判断される血液粘度の著しい増加に起因する脳血流量の減少が虚血性脳病変を惹起したと考えられた。