Experimental Animals
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実験動物の骨髄細胞に関する研究: 安全性試験における骨髄検査
松本 清司
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1991 年 40 巻 1 号 p. 17-26

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抄録
実験動物を用いて行われる安全性試験は, 人類の健康保持や豊かな社会生活を維持するために重要である。この試験に, 骨髄細胞数と細胞分別の測定からなる骨髄検査を応用する目的で, 実験動物の骨髄細胞に関する基礎的検討を行い, 次のような結果を得た。1) 各種実験動物の骨髄細胞数を調べたところ, 大型の動物ほど細胞密度が低い傾向を示した。2) 骨髄細胞分別を目的とする塗抹標本の作成にはサイトスピン法が適していた。3) 安全性試験で多用されるラットの骨髄細胞構成比を生涯にわたり調べたところ, 各骨髄細胞数が安定するのは9週齢頃であり, 雄ラットの性成熟の時期と一致した。4) 種々の化学物質の骨髄に及ぼす影響を調べたところ, 大量投与では4日以内に物質の直接または間接影響による各骨髄細胞の増殖あるいは抑制像が認められた。5) ラットで3ヵ月間の制限給餌を行うと, G/E比の上昇を伴う骨髄細胞数の減少が見られた。6) 自己免疫疾患モデル動物であるMRL/lprマウスで骨髄検査を実施したところ, 今までに報告されていない骨髄顆粒球と形質細胞の増殖が認められた。7) 近年開発されはじめたバイオ医薬品に関連し, 免疫毒性検索法を検討するために, 免疫抑制剤投与ラットで骨髄検査を実施したところ, 毒性評価上有用な結果が得られた。以上, 安全性試験を中心に著者らが行った実験動物の骨髄細胞の形態学的検索に関する一連の成績を示し, 安全性試験における骨髄検査の重要性と問題点について述べた。
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© 社団法人日本実験動物学会
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