2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S12_1
昨今ロボット支援手術の実施例は拡大し、本邦では昨年度多領域において保険収載が実現した。一方、手術支援ロボットに関する臨床試験も様々な領域で施行されてきた。多くは標準治療とロボット支援手術との比較試験であるが、ロボット支援手術の明らかな治療成績の優位性を検証した試験は少ない。直腸癌を対象としたROLARR試験では、ロボット支援手術の腹腔鏡手術と比較した主要評価項目(開腹移行率)の非劣勢は証明されなかった。また費用対効果の点ではロボット支援手術の劣性を指摘する試験も少なくない。このような客観的なデータに基づくと、手術支援ロボットの今後の開発展望には、手術工程で必要とされる機能特化や将来想定される手術環境への対応が求められると推測される。現在手術支援ロボット開発を行う企業が世界的に多数登場し、それぞれがターゲットとする疾患やロボットの独自性を想定し開発を進めている。しかし将来どの開発ロボットが臨床ニーズに即し、治療現場に受け入れられるかという方向性は定まっていない。このような世界的現状も踏まえ、既存の手術ロボットとは異なる機能やコンセプトを有する革新的医療機器の創出への展望を議論したい。