Experimental Animals
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Print ISSN : 0007-5124
マウス成人型多発性嚢胞腎遺伝子pcyの発現における系統差
長尾 静子日比野 勤小山 洋一丸野内 棣小西 宏明高橋 久英
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1991 年 40 巻 1 号 p. 45-53

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抄録
マウス成人型多発性嚢胞腎遺伝子であるpcyを近交系DBA/2及びC57BL/6マウスに導入して確立したDBA/2FG-pcy及びC57BL/6FG-payコンジェニック系統を使用し, 多発性嚢胞腎症の発現の差異を比較検討した。DBA/2FG-payウスで肉眼的に腎嚢胞は, 生後4週齢から認められた。しかし, C57BL/6FG-pcyマウスでは30週齢のみに認められた。組織学的な嚢胞性の病変は, 両系統共に4週齢から認められた。加齢に従って, DBA/2FG-pcyマウスの腎嚢胞はび慢性に, C57BL/6FG-payマウスの腎嚢胞は限局性に認められた。またDBA/2FG-payマウスの30週齢では, 正常な腎組織がほとんど認められなかったのに比し, C57BL/6FG-pcyマウスの30週齢では, 嚢胞は腎の一部を占めているに過ぎなかった。またDBA/2FG-payウスの腎体重比は4週齢から30週齢まで有意に増加したのに比し, C57BL/6FG-pcyマウスの腎体重比では16週齢以降において増加が認められた。このようにpay遺伝子による嚢胞腎の発現は, C57BL/6マウスの遺伝的背景より, DBA/2マウスの遺伝的背景の方が顕著であった。一方, 赤血球数, ヘマトクリット値の減少及び血少板数の増加が両系統共に認められたが, これらの変化はC57BL/6FG-payマウスよりDBA/2FG-pcyマウスに著明であった。これらの所見は, pay遺伝子による成人型嚢胞腎はかなり早い時期から発症し, またその発症程度及び血液学的変化は, 遺伝的背景に依存していることを示唆している。
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© 社団法人日本実験動物学会
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