抄録
内径4mm以下の人工血管の臨床応用を阻む大きな原因として人工血管吻合部における新生内膜肥厚が挙げられる。この人工血管吻合部内膜肥厚を予防する目的として手術手技の改良と共に血管縫合用材料, 人工血管材料の開発などが行われている。吻合部内膜肥厚の予防効果を判定するには, 術前の動脈硬化性変化が同程度でかつ人工血管置換術後の血行動態に差がないことが望ましい。これらの条件を満たすモデルとして家兎をもちいた腹部大動脈置換モデルを作成し, このモデルを使用して吻合部内膜肥厚に対する高脂血症の影響について実験した。今回著者らの作成した家兎腹部大動脈置換モデルの吻合部内膜肥厚はヒトの人工血管吻合部に見られる内膜肥厚部と形態学的にも組織学的にも類似しており, かつ血行再建術後の血行動態が同一の状態を示すものが容易に作成可能なことより, 人工血管吻合部内膜肥厚の実験モデルとして適していると思われた。