Experimental Animals
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ワタセジネズミCrocidura wataseiの精子発生
―光顕および電顕による観察―
足立 泰基九郎 丸正道服部 正策林 良博
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1992 年 41 巻 3 号 p. 295-303

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抄録

ワタセジネズミCrocidura wataseiの精子発生について光顕および電顕による観察を行った。精上皮周期は精子細胞尖体の形態変化を主な指標として解析した結果, 12のステージに区分可能であった。ステージIからXIIの出現頻度は各々11.0, 10.3, 6.8, 10.6, 24.0, 6.4, 4.4, 7.9, 6.4, 4.9, 3.7および3.6%である。またホールマウント標本の観察から分化中の精祖細胞はA1, A2, Intermediate, Bの4つのタイプに区分された。一方, 精子細胞はその成熟程度に応じてゴルジ相 (ステップ1-3) , 頭帽相 (ステップ4, 5) , 尖体相 (ステップ6-10) および成熟相 (ステップ11-13) の4相に区別された。ゴルジ相では複数の尖体果粒が存在し, 頭帽相ではこれらが融合して尖体を形成し, 精子細胞核表面に広がった。尖体相では核質の濃縮とともに尖体の伸長が始まり, 尖体はステップ8の精子細胞で最長となった。尖体相後期では尖体の収縮が進行し, 成熟相で幅広の尖体が完成した。ワタセジネズミに認められた精子細胞分化過程での尖体の著しい伸長とその後の収縮は, 他の哺乳類に見られない極めて特徴的な現象である。

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© 社団法人日本実験動物学会
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