抄録
イヌビワ由来のイチジク株枯病真性抵抗性を持つ台木「励広台1号」に,「とよみつひめ」を接ぎ木した際の接ぎ木親和性,株枯病抵抗性およびイチジク連作ほ場における栽培特性を調査し,「励広台1号」の台木としての利用可能性を明らかにした。「励広台1号」台木に「とよみつひめ」を接ぎ挿しした場合,穂木活着率は高く,「キバル」台木に接ぎ挿しした場合と同等であった。生育も「励広台1号」台苗は「キバル」台苗と同等以上で,接ぎ木親和性は高かった。ポットに栽植した接ぎ挿し苗に,年3回3年間に渡り株枯病胞子懸濁液を土壌にかん注したところ,「とよみつひめ」の「励広台1号」台苗は感染せず,株枯病抵抗性は「キバル」台苗より優れていた。イチジク連作ほ場に植え付けた「とよみつひめ」の「励広台1号」台樹の新梢の生育量,収量,果実品質は自根樹より優れ,「キバル」台樹と同等であった。「励広台1号」台木に「とよみつひめ」接ぎ木した場合,生育および果実生産に問題が起きる可能性は低く,イチジク栽培で最も重要な病害であるイチジク株枯病を回避するための有効な手段であることが明らかとなった。