特集にあたって:宝の山と言われたGPCRの研究はアカデミアから製薬企業を巻き込んで一世を風靡したものの,当時のオーファンGPCR創薬はほとんど成功しなかったことから,GPCR研究も一時に比べて下火になったと言わざるを得ない.しかしながら,β2アドレナリン受容体の結晶構造解析やGPCRのシグナリング研究に代表されるように,2012年のノーベル化学賞を受賞したGPCR研究は着実に進歩を遂げてきたことも事実である.今回の特集号では,GPCR結晶構造解析のブレイクスルー,従来とは異なるGPCRスクリーニング方法を取り上げると共に,感覚器官を担うGPCRやpH依存性のGPCRなどの研究レビューも取り上げた.この特集号をきっかけに,GPCR創薬研究が一皮むけて展開されることを期待したい.
表紙の説明:リン脂質二重構造の細胞膜には様々なタンパク質が存在しており,その多くは細胞膜を貫通し,外界からのシグナルを細胞内に伝達する役割を担っている.中でも,GPCRは,多くの医薬品の創薬標的になっており,その構造とシグナリングの解明は,GPCRの基礎研究にとどまらず,GPCR創薬の歯車を一気に進めるものと期待されている.画像提供:京都大学の岩田想先生(関連記事:オピニオン)