特集:進化するヘテロ環化学~触媒・合成・創薬~
特集にあたって:近年,医薬品・農薬・機能性材料などの構造式を眺めると,ヘテロ環の存在感が一層際立っていることに気づかされる.ヘテロ環の有用性は古くから注目されてきたが,本誌で特集を組んでから既に16年が経過した.その間,有機化学は目覚ましい進歩を遂げ,ヘテロ環化学もまた,骨格編集をはじめとする革新的な合成戦略の登場により,創薬・農薬開発・材料科学において不可欠な分野へと展開している.本特集では「進化するヘテロ環化学」と題し,合成・触媒・全合成・創薬など多岐にわたる研究を展開されている研究者諸氏に執筆を依頼した.ヘテロ環が秘めている可能性を再認識し,科学技術の進歩が切り拓く未来への想像を膨らませていただければ幸いである.
表紙の説明:現在,約13,000品目の医薬品が上市されているが,その多くに「ヘテロ環」と呼ばれる特別な構造が含まれている.1834年のピロールの発見を起点に,今日に至るまで多様なヘテロ環が見いだされてきた.そのため,ヘテロ環は有機化学と医薬品開発の進化を牽引してきた中心的な存在である.本特集では,ヘテロ環の反応性や合成法に関する最新の研究を紹介し,ヘテロ環化学の進展と今後の展望について概観する.
ヘテロ環は炭素以外の元素を含む環状構造で、分子の立体構造や反応性に大きな影響を与えるため、医薬・農薬・機能性分子に広く利用されている。近年では、ヘテロ環の新規合成法に加え、後期中間体に対する分子編集が注目されている。新規合成法や分子編集の進展により、後期中間体からの構造最適化が可能となった。天然物合成では、共通構造を基盤に非共通部分を後から導入する統一的全合成戦略が用いられるようになった。また骨格編集は、原子レベルでの構造変換を実現し、合成法に新たな発想をもたらしている。
リンカーを排除したproteolysis-targeting chimeras(PROTACs)の設計,噴霧可能な細胞外マトリックス由来ハイドロゲルと術後の臓器癒着の軽減,チームの相性を最適化して学習成果を向上させるYukari法の開発,Photonic crystalを用いた細胞力学的変化の高感度リアルタイム検出技術,今後の患者向医薬品ガイドについて,神経発達症に対するビタミン補充療法の臨床的意義と薬学的視点
低分子医薬品には、窒素原子を有するさまざまなヘテロ環が含まれている。創薬の観点からは、ピリジンをはじめとする含窒素ヘテロ芳香環の特定の位置を自在にハロゲン化する手法の開発が望まれているが、配向性の問題があるために困難であった。この問題を解決するための方法として、ハロゲンダンスと呼ばれるハロゲン移動反応が知られている。本稿では、この反応の最近の進展について、筆者らの研究グループの成果も交えながら、最新の研究動向を述べる。
非芳香族複素環インドリンは芳香族複素環インドールに比べて, 圧倒的未開な分野であり発展の可能性を大いに残している. デメリットの不安定性は高い反応性の裏返しであるので, インドリンの反応性をうまく制御することができれば, 新しい反応の発見の可能性がある. 本稿では, 非芳香族複素環インドリンへミアミナールの新規反応として, 環鎖互変異性を利用したインドリン環の切断に関する研究を紹介する.
有用な有機分子触媒である含窒素複素環式カルベン(N-heterocyclic carbenes: NHC)の電子的チューニングは,カルベン部位近傍の置換基導入により試みられてきた.一方でカルベンから遠く離れた部位での置換基導入はこれまで取り組まれていなかったが,筆者らはこの遠隔位電子チューニングが高性能NHC触媒を創出する上で効果的であることを見出した.本稿では遠隔位電子チューニングに基づく触媒開発研究の経緯と成果を,関連研究の例も交えながら紹介する.
金触媒の優れた三重結合選択的活性化能を利用し,様々なイミン誘導体の三重結合への求核攻撃を契機とした多成分連結型多置換含窒素ヘテロ環構築法の開発を行ってきた.その結果,アゾメチンイリド発生法を開発し,ピロリジジン骨格のワンポット構築法を見出した.また1-アザブタジエン発生法も開発し,ピラゾリン骨格,1,4-ジヒドロピリジン骨格,ピリジン骨格,アゼパン骨格のワンポット構築法を確立した.これらの詳細について紹介する.
天然の生理活性アルカロイドやその関連医薬品には,しばしば複雑な含窒素縮環骨格が含まれている.本稿では,近年我々が開発に力を入れている3-aza-Cope–Mannichカスケードによる含窒素縮環骨格構築法の開発経緯,ならびに,同カスケードを含む多段階カスケードによる種々の擬似アルカロイド化合物の合成及び天然物(−)-セファロタキシンの全合成について紹介する.
医薬品や天然物におけるヘテロ環は、各官能基の相対配置を固定する役割を果たしている他、標的の結合サイトにおいて疎水性相互作用等によって結合親和性を高める役割も果たし、その医薬品や天然物を特徴付ける最も重要な部分構造と言える。また、その効率的構築方法が重要であり、本稿では、近年我々が報告してきた含ヘテロ環天然物の全合成研究について、「ヘテロ環の構築」にフォーカスして紹介する。
ヘテロ環骨格は多くの生物活性天然物や医薬品に見られる普遍的構造単位であり,その効率的構築法の開発は天然物合成化学における重要課題である.本稿では,フロフランリグナン骨格と1,4-ベンゾジオキサンネオリグナン骨格を併せ持つ複合型ポリフェノール,プリンセピンおよびイソプリンセピンの全合成研究を紹介する.芳香環電子密度を精密に制御した交差アルドール反応と生合成模倣的エーテル環化を鍵段階とし,計4種のジアステレオマーを効率的に合成した.さらに,比旋光度,CD,HPLC解析を組み合わせることで,従来のNMR比較のみでは困難であった複合ポリフェノールの相対・絶対配置決定に有効な戦略を提示した.
飽和N-ヘテロ環は多くの医薬品に含まれており,多官能基化されたビルディングブロック供給への需要が高まっている.本研究では,イソオキサゾリジン-5-オンをアルキルナイトレン前駆体とする新規環化反応を開発した.ロジウムまたは銅触媒を用いたC–H結合アミノ化反応により窒素原子が無保護の形で飽和N-ヘテロ環が供給できた.さらに新規ナイトレン前駆体の開発により,天然物や医薬品の骨格改変手法へも展開した.
七員環ジアルコキシシリル基Si(pan)を新規ケイ素官能基として開発した.環状構造の導入により安定性と反応性を両立させ,アリールリチウム試薬との反応、C–Hシリル化,檜山クロスカップリングなど多様な変換反応に適用可能である.また,ケイ素中心への段階的なアリール基導入や,ジアリールシランジオールへの変換も実現した.本官能基は含ケイ素複雑骨格の構築を可能にし,シリコンスイッチ戦略による医薬開発への応用が期待される.
動物細胞におけるリン脂質・塩基交換反応の役割を解明するため、培養細胞株CHO-K1細胞から当該反応の欠損変異株を分離し、その解析を行った。その結果、CHO-K1細胞にはセリン交換酵素IおよびⅡが存在し、これらが動物細胞におけるホスファチジルセリン(PS)生合成の主要な責任酵素であることを明らかにした。さらに研究の過程で、培地にPSを添加するとde novoのPS生合成がほぼ完全に抑制される現象を発見し、PS生合成の調節機構の一端を示すことができた。本研究を通じて得られた経験から、筆者が考える「研究の壺」を紹介する。
スピジアⓇ点鼻液(一般名:ジアゼパム)は,既存製剤より簡便かつ迅速に定量のジアゼパムを投与し,てんかん発作を制御することを目的に米国Neurelis社が開発した経鼻投与型の抗けいれん薬である.米国では“VALTOCOⓇ”の名称で,2歳以上のてんかん患者の群発発作・急性反復発作治療薬としてFDAに承認されている.国内ではアキュリスファーマ(株)が開発を担当し,2025年6月に「てんかん重積状態」の治療薬として厚生労働省から製造販売承認を取得した.てんかん重積状態は神経学的後遺症や生命予後への影響が懸念されるため,迅速な治療介入が重要である.しかし国内では,坐剤や口腔用液が発作時の病院前治療に用いられてきたものの,成人患者に使用できる製剤がなく,その結果,救急搬送まで治療が遅れるケースも少なくなかった.
本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
今回は,61巻10号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
ヒト由来培養細胞より安定して、機能性並び構造を保持した凍結保存可能なミトコンドリアを含む製剤を製造する方法を確立した。製造されたミトコンドリア製剤は複数のミトコンドリア病患者由来細胞において、エネルギー源であるATP産生を示す酸素消費速度の増加を示し、病態モデル動物においても生存期間の延長や運動機能の改善が認められた。本ミトコンドリア製剤にはミトコンドリア病の治療効果が期待できる。
東邦大学薬学部付属薬用植物園は1929年に開設され、現在は約800種を栽培し教育・研究・社会に貢献している。教育面では薬用植物観察実習の場として利用され、研究面では天然物研究材料の提供や生態系として多様な学問領域に活用されている。さらに一般公開やSNS発信を通じ地域と交流し、生物多様性保全活動にも取り組んでいる。創立100周年を迎え、魅力ある薬用植物園を目指して活動を展開している。
神経薬理学研究は、かつての泥臭い研究から、診療情報を活用した「データ駆動型研究」に軸足を移している。医療情報から医薬品の新たな薬理作用を見出し、基礎実験でそのメカニズムを解明することで、臨床と基礎研究の橋渡しを進めてきた。ヒトの情報が新たな薬理機序を導く光となり、神経薬理学研究のさらなる奥深さを引き出し続けたい。
私は現在,国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部において,ゲノム編集を用いた遺伝子治療に関するレギュラトリーサイエンス研究に従事している.ゲノム編集遺伝子治療のような新しいモダリティについては,科学技術側が未成熟であり進化が急速であるという点で特殊性があり,難しいと感じる点もあるが,その一方で研究すべき点がまだまだ増えてくる,やりがいのある研究テーマであると感じている.引き続き若手らしく柔軟な発想を持ちつつ,社会に貢献できる研究を進めていきたい.
医薬品開発における構造最適化段階では,化合物の官能基をバイオアイソスターに置換する戦略が広く利用されている.例えば,ピリジンとベンゾニトリルは芳香環の分極,代謝安定性,水素結合形成能などが類似しており,互いにバイオアイソスターであることが知られている.実際に,メルク社は免疫プロテアソームβ5i阻害剤の開発において,ピリジンをベンゾニトリルに置き換えることで,阻害活性を約2倍に向上させている.このようなバイオアイソスターへの置換が容易になれば,化合物ライブラリーの拡張や構造活性相関研究の円滑な進展が期待される.本稿では,最近 Güdükらが報告した4位置換ピリジン1を2位置換ベンゾニトリル2に変換する新規方法論について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Klein M. et al., J. Med. Chem., 64, 10230-10245(2021).
2) Güdük R. et al., Nat. Synth., 4, 848-858 (2025).
バンコマイシン(1)は1958年に米国で臨床導入されて以来,重篤なグラム陽性菌感染症に対する治療の最終手段として用いられてきた.しかし近年,バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococcus: VRE)が世界各地で報告され,感染症治療上の大きな課題となっている.そのため,既存薬の再設計や新規治療戦略が強く求められている.これらの耐性菌では,バンコマイシン結合部位である細胞壁前駆体(LipidⅡ)のD-Ala-D-Ala配列がD-Ala-D-Lacに変異したことで,1との親和性が約1,000倍低下し,薬効が著しく減弱する.一方,2015年に発見されたテイクソバクチン(2)は,4残基から成るマクロラクトンと7残基のペプチドが結合した環状デプシペプチドであり,LipidⅡのピロリン酸基という変異を受けにくい部位に結合することで,耐性菌に対しても高い効果を示す.2は既存薬とは異なる作用機序を有することから,耐性回避の新たな手段として注目を集めている.耐性菌に対する新たな創薬研究が求められるなか,Padillaらは1と2の結合体(以下「結合体」)が耐性菌に高い抗菌活性を示すことを報告したので,本稿で紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Stogios P. J., Savchenko A., Protein Sci., 29, 654-669(2020).
2) Ling L. et al., Nature, 517, 455-459(2015).
3) Padilla M. S. T. L., Nowick J. S., J. Am. Chem. Soc., 147, 6343-6348(2025).
微生物が生産する天然物(natural products: NPs)に由来する抗生物質は,感染症治療など人類の発展に大きく寄与してきた.しかし近年,既存抗生物質に対する耐性菌の出現が深刻化しており,これに対応する新たな抗生物質探索が世界的な課題となっている.現在市場に出ている医薬品の約半数がNPsを起源とすることから,今後の抗生物質探索においても微生物由来NPsは極めて重要な資源である.しかし,これまでのNPs探索では,環境中のごく一部(わずか0.1%未満)しか分離・培養できていない微生物に依存してきた.結果として,既知のNPsを再取得するケースが多く,新規NPsの発見には限界がある.微生物種の多様性とNPsの化学構造の多様性は密接に関連すると考えられるため, 多様な微生物を利用することが新規NPs発見の鍵になると考えられる.本稿では,分離時に見落とされがちな微生物から多剤耐性菌に有効な新たなペプチドNPsを発見した好例を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Newman D. J., Cragg G. M., J. Nat. Prod., 83, 770-803(2020).
2) Amann R. I. et al., Microbiol. Rev., 59, 143-169(1995).
3) Bérdy J., J. Antibiot., 65, 385-395(2012).
4) Doroghazi J. R. et al., Nat. Chem. Biol., 10, 963-968(2014).
5) Jangra M. et al., Nature, 640, 1022-1030(2025).
生物学的なプロセスの多くは生体分子間の相互作用によって始まる.溶液中におけるDNAの塩基対は,ワトソン・クリック(Watson-Crick: WC)型を主としつつ,フーグスティーン(Hoogsteen: HG)型との平衡を示す.近年,このWC-HG平衡がタンパク質との相互作用において重要であることが明らかになってきた.バクテリアのトランスポザーゼTnpAは,一本鎖DNA上に一過的に形成されるヘアピン構造を標的とし,その左端(left end: LE)と右端(right end: RE)を特異的に認識,結合する.TnpAとDNAの複合体結晶構造では,ヘアピン構造の頂端のループ(アピカルループ)直下のTA塩基対がHG型をとる.本稿で紹介する研究は,タンパク質が結合していないDNA単体において,LEとREのアピカルループ直下のTA塩基対がWC型とHG型の平衡状態にあることを示した.また,ループ長(TTTまたはTT)の違いがWC型とHG型の平衡比率を変え,その平衡比率がTnpAとの親和性に反映されることを示した.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Alvey H. S. et al., Nat. Commun., 5, 4786(2014).
2) Guseva A. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 64, e202425067(2025).
3) Ken M. L. et al., Nature, 617, 835-841(2023).
がん細胞では,エネルギーや物質を効率よく得るために代謝リプログラミングが起こるが,これはがんの弱点(アキレス腱)にもなり得る.本稿では,大腸がんの発がん過程での代謝リプログラミングに重要な代謝酵素であるglutamic-pyruvic transaminase 1(GPT1)の新たな役割を解明し,創薬探索から新規治療開発を達成したXiongらの研究を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Xiong L. et al., Sci. Transl. Med., 17, eadp9805(2025).
2) Dai Z. et al., Nat. Rev. Genet., 21, 737-753(2020).
3) Tran T. Q. et al., Nat. Cancer, 1, 345-358(2020).
4) Lee D. et al., J. Clin. Invest., 127, 1856-1872(2017).
アルツハイマー病(AD)はアミロイドβ(Aβ)の脳内蓄積が発症に関与すると考えられており,Aβを標的とした免疫療法が開発された.しかし,Aβが脳内でどのように除去されるのか,その詳細な機序は十分に解明されていない.Aβ免疫療法は十分に効果が得られない例や,副反応を引き起こす例もあり,その薬理学的作用機序の理解は,AD患者の転帰を改善するうえで重要である.本稿では,Aβ免疫療法によるAβ除去メカニズムを明らかにするため,免疫療法を受けたAD患者の死後脳を詳細に解析したOlstらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) van Olst L. et al., Nat. Med., 31, 1604-1616(2025)
食品や化粧品などにも含まれているエクソソームは,細胞間でのRNAやタンパク質の輸送を担う細胞由来の脂質性ナノ粒子として血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)などの生理的障壁を通過できるため,DDSキャリアとしての応用が大きく期待されている.しかし,タンパク質や核酸などといった高分子薬物をエクソソームに後から内包する際に,従来法ではエクソソーム本来の構造や機能に損傷を与えることが大きな課題であった. これが克服できれば,エクソソームを基盤とした新しいワクチン材料としての感染症,公衆衛生方面への応用が期待できる.本稿では,その解決策の1つの非破壊的内包手段として,膜融合能の高い脂質ナノ粒子であるキュボソームを利用した手法を開発したSonらの研究を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Zhang Y. et al., Cell Biosci., 9, 19(2019).
2) Son G. et al., Nat. Commun., 16, 4799(2025).
3) Kim H., Leal C., ACS Nano, 9, 10(2015).
敗血症性ショックは,集中治療室(以下,ICU)入室患者の主な死亡原因の1つである.敗血症の管理体制の進歩にもかかわらず,敗血症性ショックの死亡率は30~35%と高い.敗血症性ショックでは臓器を維持するために迅速な血行動態の安定が求められる.日本版敗血症診療ガイドライン2024において,昇圧剤の第一選択薬にノルアドレナリン(NA)が記載され,NAに追加する第二選択薬にアルギニンバソプレシン(AVP)が記載されている.しかし,AVPへの反応性についての情報は少なく,どのような患者に効果的かは明らかではない.本稿では,敗血症性ショックに対してNAにAVPを追加する場合の,治療反応性に関連する患者特性を評価したMelchersらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Bauer M. et al., Crit. Care, 24, 239(2020).
2) Shime N. et al., J. Intensive Care, 13, 15(2025).
3) Melchers M. et al., Ann. Intensive Care, 15, 59(2025).
4) Gordon A. C. et al., JAMA., 316, 509-518 (2016).
5) Russell J. A. et al., N. Engl. J. Med., 358, 877-887(2008).
昭和大学(現・昭和医科大学)名誉教授の宮坂貞先生たちが成し遂げた抗がん剤イリノテカンの開発は、初期開発から市場開拓まで我が国で主導的に進められた医薬品開発の先駆的な成功事例である。2024年に逝去された宮坂先生への追悼の意をこめて、イリノテカンの研究開発について紹介する。