ファルマシア
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最新号
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目次
  • 2026 年62 巻1 号 p. 2-3
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル フリー

    特集:進化するヘテロ環化学~触媒・合成・創薬~

    特集にあたって:近年,医薬品・農薬・機能性材料などの構造式を眺めると,ヘテロ環の存在感が一層際立っていることに気づかされる.ヘテロ環の有用性は古くから注目されてきたが,本誌で特集を組んでから既に16年が経過した.その間,有機化学は目覚ましい進歩を遂げ,ヘテロ環化学もまた,骨格編集をはじめとする革新的な合成戦略の登場により,創薬・農薬開発・材料科学において不可欠な分野へと展開している.本特集では「進化するヘテロ環化学」と題し,合成・触媒・全合成・創薬など多岐にわたる研究を展開されている研究者諸氏に執筆を依頼した.ヘテロ環が秘めている可能性を再認識し,科学技術の進歩が切り拓く未来への想像を膨らませていただければ幸いである.

    表紙の説明:現在,約13,000品目の医薬品が上市されているが,その多くに「ヘテロ環」と呼ばれる特別な構造が含まれている.1834年のピロールの発見を起点に,今日に至るまで多様なヘテロ環が見いだされてきた.そのため,ヘテロ環は有機化学と医薬品開発の進化を牽引してきた中心的な存在である.本特集では,ヘテロ環の反応性や合成法に関する最新の研究を紹介し,ヘテロ環化学の進展と今後の展望について概観する.

オピニオン
  • 井上 将行
    2026 年62 巻1 号 p. 1
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    ヘテロ環は炭素以外の元素を含む環状構造で、分子の立体構造や反応性に大きな影響を与えるため、医薬・農薬・機能性分子に広く利用されている。近年では、ヘテロ環の新規合成法に加え、後期中間体に対する分子編集が注目されている。新規合成法や分子編集の進展により、後期中間体からの構造最適化が可能となった。天然物合成では、共通構造を基盤に非共通部分を後から導入する統一的全合成戦略が用いられるようになった。また骨格編集は、原子レベルでの構造変換を実現し、合成法に新たな発想をもたらしている。

Editor's Eye
最前線
最前線
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  • 遠隔位電子チューニングによるアプローチ
    猪熊 翼, 山田 健一
    2026 年62 巻1 号 p. 19-24
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    有用な有機分子触媒である含窒素複素環式カルベン(N-heterocyclic carbenes: NHC)の電子的チューニングは,カルベン部位近傍の置換基導入により試みられてきた.一方でカルベンから遠く離れた部位での置換基導入はこれまで取り組まれていなかったが,筆者らはこの遠隔位電子チューニングが高性能NHC触媒を創出する上で効果的であることを見出した.本稿では遠隔位電子チューニングに基づく触媒開発研究の経緯と成果を,関連研究の例も交えながら紹介する.

最前線
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最前線
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  • 稲井 誠, 濱島 義隆
    2026 年62 巻1 号 p. 40-44
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    ヘテロ環骨格は多くの生物活性天然物や医薬品に見られる普遍的構造単位であり,その効率的構築法の開発は天然物合成化学における重要課題である.本稿では,フロフランリグナン骨格と1,4-ベンゾジオキサンネオリグナン骨格を併せ持つ複合型ポリフェノール,プリンセピンおよびイソプリンセピンの全合成研究を紹介する.芳香環電子密度を精密に制御した交差アルドール反応と生合成模倣的エーテル環化を鍵段階とし,計4種のジアステレオマーを効率的に合成した.さらに,比旋光度,CD,HPLC解析を組み合わせることで,従来のNMR比較のみでは困難であった複合ポリフェノールの相対・絶対配置決定に有効な戦略を提示した.

最前線
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挑戦者からのメッセージ
  • 体細胞遺伝学による挑戦
    西島 正弘
    2026 年62 巻1 号 p. 55-58
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    動物細胞におけるリン脂質・塩基交換反応の役割を解明するため、培養細胞株CHO-K1細胞から当該反応の欠損変異株を分離し、その解析を行った。その結果、CHO-K1細胞にはセリン交換酵素IおよびⅡが存在し、これらが動物細胞におけるホスファチジルセリン(PS)生合成の主要な責任酵素であることを明らかにした。さらに研究の過程で、培地にPSを添加するとde novoのPS生合成がほぼ完全に抑制される現象を発見し、PS生合成の調節機構の一端を示すことができた。本研究を通じて得られた経験から、筆者が考える「研究の壺」を紹介する。

新薬のプロフィル
  • 熊谷 拓也
    2026 年62 巻1 号 p. 59-61
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    スピジア点鼻液(一般名:ジアゼパム)は,既存製剤より簡便かつ迅速に定量のジアゼパムを投与し,てんかん発作を制御することを目的に米国Neurelis社が開発した経鼻投与型の抗けいれん薬である.米国では“VALTOCO”の名称で,2歳以上のてんかん患者の群発発作・急性反復発作治療薬としてFDAに承認されている.国内ではアキュリスファーマ(株)が開発を担当し,2025年6月に「てんかん重積状態」の治療薬として厚生労働省から製造販売承認を取得した.てんかん重積状態は神経学的後遺症や生命予後への影響が懸念されるため,迅速な治療介入が重要である.しかし国内では,坐剤や口腔用液が発作時の病院前治療に用いられてきたものの,成人患者に使用できる製剤がなく,その結果,救急搬送まで治療が遅れるケースも少なくなかった.

承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2026 年62 巻1 号 p. 62
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

     本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.

    今回は,61巻10号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.

    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.

日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
薬用植物園の花ごよみ
期待の若手
期待の若手
  • 山下 拓真
    2026 年62 巻1 号 p. 69_2
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    私は現在,国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部において,ゲノム編集を用いた遺伝子治療に関するレギュラトリーサイエンス研究に従事している.ゲノム編集遺伝子治療のような新しいモダリティについては,科学技術側が未成熟であり進化が急速であるという点で特殊性があり,難しいと感じる点もあるが,その一方で研究すべき点がまだまだ増えてくる,やりがいのある研究テーマであると感じている.引き続き若手らしく柔軟な発想を持ちつつ,社会に貢献できる研究を進めていきたい.

トピックス
  • 長野 秀嗣
    2026 年62 巻1 号 p. 70
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    医薬品開発における構造最適化段階では,化合物の官能基をバイオアイソスターに置換する戦略が広く利用されている.例えば,ピリジンとベンゾニトリルは芳香環の分極,代謝安定性,水素結合形成能などが類似しており,互いにバイオアイソスターであることが知られている.実際に,メルク社は免疫プロテアソームβ5i阻害剤の開発において,ピリジンをベンゾニトリルに置き換えることで,阻害活性を約2倍に向上させている.このようなバイオアイソスターへの置換が容易になれば,化合物ライブラリーの拡張や構造活性相関研究の円滑な進展が期待される.本稿では,最近 Güdükらが報告した4位置換ピリジン1を2位置換ベンゾニトリル2に変換する新規方法論について紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Klein M. et al., J. Med. Chem., 64, 10230-10245(2021).

    2) Güdük R. et al., Nat. Synth., 4, 848-858 (2025).

  • 鈴木 桃子
    2026 年62 巻1 号 p. 71
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    バンコマイシン(1)は1958年に米国で臨床導入されて以来,重篤なグラム陽性菌感染症に対する治療の最終手段として用いられてきた.しかし近年,バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococcus: VRE)が世界各地で報告され,感染症治療上の大きな課題となっている.そのため,既存薬の再設計や新規治療戦略が強く求められている.これらの耐性菌では,バンコマイシン結合部位である細胞壁前駆体(LipidⅡ)のD-Ala-D-Ala配列がD-Ala-D-Lacに変異したことで,1との親和性が約1,000倍低下し,薬効が著しく減弱する.一方,2015年に発見されたテイクソバクチン(2)は,4残基から成るマクロラクトンと7残基のペプチドが結合した環状デプシペプチドであり,LipidⅡのピロリン酸基という変異を受けにくい部位に結合することで,耐性菌に対しても高い効果を示す.2は既存薬とは異なる作用機序を有することから,耐性回避の新たな手段として注目を集めている.耐性菌に対する新たな創薬研究が求められるなか,Padillaらは12の結合体(以下「結合体」)が耐性菌に高い抗菌活性を示すことを報告したので,本稿で紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Stogios P. J., Savchenko A., Protein Sci., 29, 654-669(2020).

    2) Ling L. et al., Nature, 517, 455-459(2015).

    3) Padilla M. S. T. L., Nowick J. S., J. Am. Chem. Soc., 147, 6343-6348(2025).

  • 堤 隼馬
    2026 年62 巻1 号 p. 72
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    微生物が生産する天然物(natural products: NPs)に由来する抗生物質は,感染症治療など人類の発展に大きく寄与してきた.しかし近年,既存抗生物質に対する耐性菌の出現が深刻化しており,これに対応する新たな抗生物質探索が世界的な課題となっている.現在市場に出ている医薬品の約半数がNPsを起源とすることから,今後の抗生物質探索においても微生物由来NPsは極めて重要な資源である.しかし,これまでのNPs探索では,環境中のごく一部(わずか0.1%未満)しか分離・培養できていない微生物に依存してきた.結果として,既知のNPsを再取得するケースが多く,新規NPsの発見には限界がある.微生物種の多様性とNPsの化学構造の多様性は密接に関連すると考えられるため, 多様な微生物を利用することが新規NPs発見の鍵になると考えられる.本稿では,分離時に見落とされがちな微生物から多剤耐性菌に有効な新たなペプチドNPsを発見した好例を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Newman D. J., Cragg G. M., J. Nat. Prod., 83, 770-803(2020).

    2) Amann R. I. et al., Microbiol. Rev., 59, 143-169(1995).

    3) Bérdy J., J. Antibiot., 65, 385-395(2012).

    4) Doroghazi J. R. et al., Nat. Chem. Biol., 10, 963-968(2014).

    5) Jangra M. et al., Nature, 640, 1022-1030(2025).

  • 阪本 知樹
    2026 年62 巻1 号 p. 73
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    生物学的なプロセスの多くは生体分子間の相互作用によって始まる.溶液中におけるDNAの塩基対は,ワトソン・クリック(Watson-Crick: WC)型を主としつつ,フーグスティーン(Hoogsteen: HG)型との平衡を示す.近年,このWC-HG平衡がタンパク質との相互作用において重要であることが明らかになってきた.バクテリアのトランスポザーゼTnpAは,一本鎖DNA上に一過的に形成されるヘアピン構造を標的とし,その左端(left end: LE)と右端(right end: RE)を特異的に認識,結合する.TnpAとDNAの複合体結晶構造では,ヘアピン構造の頂端のループ(アピカルループ)直下のTA塩基対がHG型をとる.本稿で紹介する研究は,タンパク質が結合していないDNA単体において,LEとREのアピカルループ直下のTA塩基対がWC型とHG型の平衡状態にあることを示した.また,ループ長(TTTまたはTT)の違いがWC型とHG型の平衡比率を変え,その平衡比率がTnpAとの親和性に反映されることを示した.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Alvey H. S. et al., Nat. Commun., 5, 4786(2014).

    2) Guseva A. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 64, e202425067(2025).

    3) Ken M. L. et al., Nature, 617, 835-841(2023).

  • 前田 将宏
    2026 年62 巻1 号 p. 74
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    がん細胞では,エネルギーや物質を効率よく得るために代謝リプログラミングが起こるが,これはがんの弱点(アキレス腱)にもなり得る.本稿では,大腸がんの発がん過程での代謝リプログラミングに重要な代謝酵素であるglutamic-pyruvic transaminase 1(GPT1)の新たな役割を解明し,創薬探索から新規治療開発を達成したXiongらの研究を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Xiong L. et al., Sci. Transl. Med., 17, eadp9805(2025).

    2) Dai Z. et al., Nat. Rev. Genet., 21, 737-753(2020).

    3) Tran T. Q. et al., Nat. Cancer, 1, 345-358(2020).

    4) Lee D. et al., J. Clin. Invest., 127, 1856-1872(2017).

  • 藤川 理沙子
    2026 年62 巻1 号 p. 75
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    アルツハイマー病(AD)はアミロイドβ(Aβ)の脳内蓄積が発症に関与すると考えられており,Aβを標的とした免疫療法が開発された.しかし,Aβが脳内でどのように除去されるのか,その詳細な機序は十分に解明されていない.Aβ免疫療法は十分に効果が得られない例や,副反応を引き起こす例もあり,その薬理学的作用機序の理解は,AD患者の転帰を改善するうえで重要である.本稿では,Aβ免疫療法によるAβ除去メカニズムを明らかにするため,免疫療法を受けたAD患者の死後脳を詳細に解析したOlstらの論文を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) van Olst L. et al., Nat. Med., 31, 1604-1616(2025)

  • 坂本 健太郎
    2026 年62 巻1 号 p. 76
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    食品や化粧品などにも含まれているエクソソームは,細胞間でのRNAやタンパク質の輸送を担う細胞由来の脂質性ナノ粒子として血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)などの生理的障壁を通過できるため,DDSキャリアとしての応用が大きく期待されている.しかし,タンパク質や核酸などといった高分子薬物をエクソソームに後から内包する際に,従来法ではエクソソーム本来の構造や機能に損傷を与えることが大きな課題であった. これが克服できれば,エクソソームを基盤とした新しいワクチン材料としての感染症,公衆衛生方面への応用が期待できる.本稿では,その解決策の1つの非破壊的内包手段として,膜融合能の高い脂質ナノ粒子であるキュボソームを利用した手法を開発したSonらの研究を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Zhang Y. et al., Cell Biosci., 9, 19(2019).

    2) Son G. et al., Nat. Commun., 16, 4799(2025).

    3) Kim H., Leal C., ACS Nano, 9, 10(2015).

  • 西田 祥啓
    2026 年62 巻1 号 p. 77
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/01
    ジャーナル 認証あり

    敗血症性ショックは,集中治療室(以下,ICU)入室患者の主な死亡原因の1つである.敗血症の管理体制の進歩にもかかわらず,敗血症性ショックの死亡率は30~35%と高い.敗血症性ショックでは臓器を維持するために迅速な血行動態の安定が求められる.日本版敗血症診療ガイドライン2024において,昇圧剤の第一選択薬にノルアドレナリン(NA)が記載され,NAに追加する第二選択薬にアルギニンバソプレシン(AVP)が記載されている.しかし,AVPへの反応性についての情報は少なく,どのような患者に効果的かは明らかではない.本稿では,敗血症性ショックに対してNAにAVPを追加する場合の,治療反応性に関連する患者特性を評価したMelchersらの論文を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Bauer M. et al., Crit. Care, 24, 239(2020).

    2) Shime N. et al., J. Intensive Care, 13, 15(2025).

    3) Melchers M. et al., Ann. Intensive Care, 15, 59(2025).

    4) Gordon A. C. et al., JAMA., 316, 509-518 (2016).

    5) Russell J. A. et al., N. Engl. J. Med., 358, 877-887(2008).

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