ファルマシア
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目次
  • 2024 年 60 巻 10 号 p. 908-909
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー

    ミニ特集:創立150周年を迎える国立医薬品食品衛生研究所―安全と安心のための薬学の追究―

    ミニ特集にあたって:本年,国立医薬品食品衛生研究所は創立150周年を迎える.同研究所は我が国で最古の国立の試験研究機関であるとともに,薬学会や本誌とも関わりの深い日本薬局方の制定にも大きく貢献してきた.さらに現在は,名称が表すように,多方面の分野で国民の健康と福祉に奉仕するべくレギュラトリーサイエンスをリードする研究所として,国内外に活躍の場を拡げている.本ミニ特集では,その歴史的な変遷とともに最先端の取り組みを紹介していただいた.

    表紙の説明:戦時統制下,各道府県では売薬メーカーの整理統合が進み,長野県では数百の売薬メーカーが統合して,「長野県製薬株式会社」が誕生した.社名は当時の名残であり,現在まで胃腸薬「百草丸」を製造してきた.「百草」と呼ばれる薬の歴史は更に古く,江戸時代に御嶽を訪れた修験者たちから伝えられたとされる.工場の見学通路には,各家庭で作られていた百草の薬袋,民間薬で用いられた生薬や押し葉標本などが展示されている.

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ミニ特集 セミナー
  • 150年の物語とこれから
    本間 正充, 齋藤 嘉朗
    2024 年 60 巻 10 号 p. 915-920
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル 認証あり

    国立医薬品食品衛生研究所(国立衛研)は今年で創立150周年を迎える我が国最古の国立の試験研究機関である。明治初期の設立当初は海外から輸入される医薬品の品質検査を主な業務としていたが、現在では医薬品だけでなく、医療機器、再生医療等製品、化粧品、洗剤などの生活用品、食品や食品添加物・残留農薬、食品の容器・包装に使われるプラスチックなど、我々の生活環境中に存在するあらゆる化学物質、さらには食品中の微生物なども研究対象としている。これら医薬品、化学製品、食品等について、その品質、有効性および安全性を正しく評価するための試験・研究・調査を行い、それらの成果を、厚生労働行政をはじめとした国の施策に反映させ、国民の健康と生活環境を維持・向上させることを使命としている。国立衛研の歴史を紹介すると共に、今後の展望を示したい。

ミニ特集 話題
ミニ特集 話題
ミニ特集 話題
医療の現場から
話題
話題
セミナー
最終講義
留学体験記 世界の薬学現場から
  • 留学に求めるものは何か
    石田 裕丈
    2024 年 60 巻 10 号 p. 958-959
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル 認証あり

    筆者は、3か所のアメリカの大学で、合計3年半の留学経験がある。留学先は、若手研究者海外挑戦プログラムでバーモント大学で4か月、博士号を取得後にテキサス大学健康科学センターサンアントニオ校で約2年、マイアミ大学で1年弱である。留学先ではin vivo Caイメージングをキーワードとし、研究を進めていった。3年半の留学経験を研究と私生活、アメリカの地域性の違いなどを含めてカジュアルに執筆したので、気軽に読んでいただきたい。

長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
トピックス
  • 松岡 純平
    2024 年 60 巻 10 号 p. 964
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル 認証あり

    芳香族ハロゲン化物は,医薬品や化学製品の合成中間体として欠かせない化合物群である.N-ハロゲンスクシンイミド(NXS)は芳香族ハロゲン化反応に広く利用されているが,ニトロ基やシアノ基が置換された電子密度の低い芳香環のハロゲン化は困難といった問題がある.このような課題に対して,これまでルイス酸やルイス塩基を活性化剤として添加する手法が報告されてきた.今回,Konaらは硫黄―カルボラン触媒を新たに開発し,不活性な芳香族類や医薬品のハロゲン化を達成したので,紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Wang W. et al., J. Am. Chem. Soc., 144, 13415-13425(2022).

    2) Nishii Y. et al., J. Am. Chem. Soc., 142, 1621-1629(2020).

    3) Kona C. N. et al., Chem, 10, 402-413 (2024).

  • 中根 啓太
    2024 年 60 巻 10 号 p. 965
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル 認証あり

    治療薬候補の臨床効果にはばらつきがあり,その要因として薬剤のオフターゲットやアロステリック効果,分子糊効果によるインタラクトームの変化が影響すると考えられる.薬剤の標的同定やインタラクトーム解析は重要であるが,従来の細胞内におけるプロファイリング技術には課題が残っている.本稿では,細胞内における網羅的な薬剤のインタラクトーム解析ツール:BioTACを開発した,Taoらの成果を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Ferguson F. M., Gray N. S., Nat. Rev. Drug Discov., 17, 353-377 (2018).

    2) Tao A. J. et al., Nat. Commun., 14, 8016 (2023).

  • 西村 壮央
    2024 年 60 巻 10 号 p. 966
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル 認証あり

    無植物から得られた生物活性分子のなかには,植物に共生する微生物が真の生産者である場合がある.このような微生物の多くは,特定の共生環境でのみ生育が可能で,一般的な実験室環境下では培養が困難であり,工業生産などへの応用が難しい.Kudoらは,in vitro Cas9反応とバクテリア人工染色体(bacterial artificial chromosome: BAC)上でのギブソンアセンブリーを応用し,相同性が高い配列が繰り返されるI型モジュール型ポリケチド合成酵素遺伝子の標的領域を制約なく編集できる革新的な技術「in vitroモジュール編集」を報告している.本技術を用いて天然物の設計図とも言える生合成遺伝子を編集し,異種発現ホストに発酵生産させることができれば,自由にデザインされた化合物の生産が可能になると期待できる.本稿では,培養困難な微生物由来化合物生産における課題の解決策の1つとして,in vitroモジュール編集を活用したFR900359の生産に関する文献を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Kudo K. et al., Nat. Commun., 11, 4022(2020).

    2) Hashimoto T. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 63, e202317805(2024).

    3) Fujioka M. et al., J. Org. Chem., 53, 2820-2825(1988).

    4) Taniguchi M. et al., J. Antibiot., 56, 358-363(2003).

  • 柚山 健一
    2024 年 60 巻 10 号 p. 967
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル 認証あり

    ラマン散乱分光を用いると,生理学的条件において周辺環境の影響を排除することなく生体分子を検出し,その構造を調べることができる.しかしながら通常の測定では,大多数を占める分子から平均化されたスペクトルが得られ,集団のなかに存在する少数分子からの信号を検出することは難しい.LiuとHuangらは,プラズモン光トラッピングを基にしたハイスループットの単一分子表面増強ラマン散乱(surface-enhanced Raman scattering: SERS)分光法を開発し,アミリン(膵島アミロイドポリペプチド)のアミロイド線維形成に関わる2種類の過渡種を検出することに成功したので,本稿で紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Fu W. et al., Nat. Commun., 14, 6996(2023).

    ) Ashkin A., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 94, 4853-4860(1997).

    3) Shoji T., Tsuboi Y., J. Phys. Chem. Lett., 5, 2957-2967(2014).

  • 篠田 典子
    2024 年 60 巻 10 号 p. 968
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル 認証あり

    マラリアは,ハマダラカによって媒介され,マラリア原虫がヒト生体内に侵入することで発症する原虫感染症であり,今後我が国においても気候変動に伴う流行が危惧されている.マラリア原虫は蚊の体内で複数の形態をとり,有性生殖母体のガメトサイト,有性生殖可能なガメート,動性を持つオーキネートの順で形態を変化させ,中腸上皮細胞中で接合子嚢であるオーシストになると,内部で唾液腺感染型虫体スポロゾイトを形成する.一方で,蚊はマラリア原虫に対する対抗手段を有している.蚊の感染防御の中心である中腸では,極性を持つ上皮細胞による物理的バリア,エフェクター分子を介した免疫応答,病原体のメラニン化,抗菌ペプチド分泌,一酸化窒素による攻撃などの防御機能が備わっている.本稿では,中腸前駆細胞によるマラリア原虫に対する新たな感染防御能についてBarlettaらの論文を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) World Health Organization,World malaria report 2023, 94-106(2023).

    2) 横山卓也ほか,化学と生物,50,196-202(2012).

    3) Barletta A. B. F. et al., Nat Commun., 15, 1422(2024).

  • 岩橋 美咲
    2024 年 60 巻 10 号 p. 969
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル 認証あり

    「こころの病」と聞いて多くの人がまず思い浮かべる疾患の1つは「うつ病」ではないだろうか.厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査の概況」では,治療を受けたうつ病患者の総数は172万人にも上る.抑うつ気分や興味関心の低下,希死念慮などの様々な精神症状を呈するうつ病は,患者個人だけでなく社会全体にとっても重大な損失を与える.これまで,うつ病の克服のために多くの抗うつ薬が開発されてきた.一方で,効果発現まで時間を要することや治療抵抗性を示す患者が存在すること,持続性に乏しいことなど課題も多い.特に持続性は,再燃や離脱症状のリスクを回避するために重要な検討課題であるといえる.

    このような背景のもと,即効性と持続性の課題を同時にクリアしうる期待の星として,ケタミン代謝産物のヒドロキシノルケタミン(HNK)が新たな抗うつ薬候補として注目されている.本稿では不明であったHNKの抗うつ作用の分子機序を解明し,うつ病を含むストレス関連疾患の新規治療標的を見いだした研究を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Berman R. M. et al., Biol. Psychiatry, 47, 351-354(2000).

    2) Kawatake-Kuno A. et al., Neuron, 112, 1265-1285(2024).

  • 大石 裕晃
    2024 年 60 巻 10 号 p. 970
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル 認証あり

    哺乳類の発生は,卵子および精子の配偶子が結合し形成される受精卵から始まる.マウス受精卵が卵割した着床前胚の2細胞期胚において,すべての細胞に分化可能な全能性を獲得する.この全能性は接合子ゲノム活性化(zygotic genome activation: ZGA)やエピゲノムのリプログラミングなどの工程によって特徴付けられる.この受精卵の細胞分裂の過程で多様な組織へ分化能を有する内部細胞塊(inner cell mass: ICM)や将来胎盤へ寄与する栄養外胚葉を有した胚盤胞を形成する.一方で,全能性から多能性への移行過程の分子機構は未だ完全には解明されていない.本稿では,ゲノム内に散在する内在性レトロウイルスであるlong terminal repeat(LTR)型のレトロ転移因子(レトロトランスポゾン)と全能性および多能性獲得との関連について,最新の知見をもとに紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Ishiuchi T., Sakamoto M., Life Sci. Alliance, 6, e202302225(2023).

    2) de la Rosa S. et al., Sci. Adv., 10, eadk9394(2024).

  • 餅原 弘樹
    2024 年 60 巻 10 号 p. 971
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル 認証あり

    がんに伴う倦怠感はcancer-related fatigue(CRF)と呼ばれる.「なんとなくだるい」という主観的な感覚は,患者自身も症状として訴えにくく,医療者もまた,その訴えを過小評価しているとの報告がある.CRFに対し有効とされる副腎皮質ステロイドの使用は,海外報告が多い一方で,日本人を対象としたエビデンスは少ない.本稿では,日本人進行がん患者のCRFに対するベタメタゾン4mgの有効性を評価したMiyazakiらの論文を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Passik S. D. et al., J. Pain Symptom Manage., 24, 481-493(2002).

    2) Miyazaki K. et al., J. Pain Symptom Manage., 67, 393-401(2024).

    3) Matsuo N. et al., J. Palliat. Med., 15, 1011-1016(2012).

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