2016 年 52 巻 11 号 p. 1080
枡井雅一郎先生の訃報に接し,教え子の一人として痛惜の念にたえません.
枡井先生は昭和29年から35年間の長きにわたって大阪大学薬学部における教学の発展に尽力され,昭和40年から主宰された物理分析学講座では,いち早く電気化学的手法を取り入れた薬学研究を展開されました.その研究では,アミン,ナイトロン,ヒドロキシアミン,ニトロソアミンなどの含窒素化合物や,ホスフィン,ホスファイトなどの有機リン化合物を対象とし,電気化学分析法や有機電解合成反応の開発,電子移行反応の機構解明などに取り組まれました.枡井先生が確立された重金属触媒を用いない様々な有機電解合成反応は,近年注目されているグリーン・ケミストリーそのものです.