ファルマシア
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ファーマコゲノミクス検査は抗血小板薬の治療効果予測に有用か?
平 大樹
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2017 年 53 巻 5 号 p. 473

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抄録

薬物代謝酵素や薬物輸送担体などの遺伝子多型に基づき,薬剤選択や投与量調節を行うファーマコゲノミクス(pharmacogenomics:PGx)検査は個別化薬物療法の実現に向けた有益なツールとして注目が集まっている.抗血小板薬クロピドグレルは,虚血性脳血管障害後の再発抑制や経皮的冠動脈形成術が適用される虚血性心疾患,末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制に適応を有する.本薬剤自体は抗血小板活性を持たない化合物であるが,経口投与後に薬物代謝酵素のシトクロームP450(CYP)2C19により代謝活性化を受けて抗血小板活性を発揮する.したがって,CYP2C19遺伝子変異により代謝能が低下した患者(*2または*3アレル保有者)では,活性代謝物濃度が低くなるために治療効果が不良となる可能性が報告されている.Clinical pharmacogenetics imple-mentation consortium(CPIC)が公表しているガイドラインでは,代謝能が低下する遺伝子変異を有する患者においてはプラスグレルなど,他の薬剤に変更することが推奨されている. 一方で,実臨床におけるPGx検査の有用性に関する報告はいくつか見られるものの,一定の見解は得られておらず,結論についてはまだ議論の余地がある.Wangらは,CYP2C19遺伝子多型がクロピドグレルの治療効果に及ぼす影響について,軽微な脳卒中または一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)の既往を有する患者を対象とした大規模臨床研究を実施しているので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Scott S. A. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 94, 317-323(2013).
2) Wang Y. et al., JAMA., 316, 70-78(2016).

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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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