抄録
博士課程在学中は長井記念薬学研究奨励支援事業よりご支援いただき,心より感謝している.私が研究者,なかでもアカデミアを志し,博士課程への進学を決意したのは修士課程の頃だった.当時の私はうつ病に関する研究に従事しており,進学後は少し異なる領域に挑戦したいと考えていた.このような背景から,研究時間を十分に確保することは非常に重要であり,生活費等を稼ぐために時間を使うことを避けたいと考えていた時に出会ったのが貴事業である.幸運なことに採択いただき,慶應義塾大学薬学部の多胡めぐみ准教授(現・同大学教授)指導のもと,がんの発症機序や薬理学的研究に存分に取り組むことができた.博士課程における成果を論文としてまとめることができたのは,ひとえに貴事業のご支援の賜物だと思っている.
学位取得後は,がん治療時に細胞で生じる現象を詳細に理解するための研究を行いたいと考えた.現在は,群馬大学未来先端研究機構の柴田淳史准教授のもと,細胞レベルでDNA修復機構やDNA損傷に関連する免疫応答制御についての研究に従事している.これまでの経験から私が重要だと考えることは,時間への配慮と環境変化への適応である.その点を意識しつつ,今後も細胞レベルでの疾患や治療の根源的な理解を通じて,究極の生命システムである人間にとって最適な薬の創生に貢献できるよう精進したい.