2021 年 57 巻 4 号 p. 317
タンパク質を標的とする薬の多くは,酵素阻害やリガンド結合阻害による活性調節に依存し,適用可能なタンパク質は限られる.そこで,標的となりにくいタンパク質を分解することによって制御するproteolysis-targeting chimaeras(PROTACs)をはじめとした手法が開発されてきた.しかしながら,これらの手法は細胞内におけるタンパク質分解機構を利用するため,その適用は主に細胞質内のタンパク質に限られてきた.
今回Banikらは,リソソームへのシャトル輸送に関わる細胞表面上のカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CI-M6PR)に着目した.CI-M6PRと標的タンパク質の両方に結合するキメラ分子lysosome-targeting chimaeras(LYTACs)を設計・創製し,利用することで膜および細胞外タンパク質の特異的分解に成功したので,本稿で紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Sun X. et al., Signal Transduct. Target Ther., 4, 64(2019).
2) Banik S. M. et al., Nature, 584, 291-297(2020).