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食品添加物「没食子酸」は脂肪肝炎を改善する?
松尾 康平
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キーワード: 没食子酸, 脂肪肝炎, miRNA, NFE2L2
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2022 年 58 巻 12 号 p. 1162

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抄録
没食子酸は野菜,果物,赤ワイン,お茶等に含まれ,その高い還元力から食品添加物(酸化防止剤)としても使用されている身近なポリフェノールである.一方で,近年没食子酸には,抗酸化作用だけではなく抗がん作用,抗炎症作用,抗菌作用など様々な生理的効果が報告されている.非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)は,先進国において発症率が増加し続けている進行性の肝疾患であり,肝細胞に脂肪が蓄積するだけの単純性脂肪肝と,炎症や肝細胞へのダメージを伴う非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分類される.NASHの発症には2型糖尿病などの代謝異常が関与しており,NASHが進行すると肝硬変や肝がんを引き起こす場合がある.しかし,NASH治療薬の開発は難度が高く,アメリカ食品医薬品局に承認された治療薬は未だない.本稿では,没食子酸がNASHを改善する分子機構の一端を解明したLeeらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Yang K. et al., Front. Immunol., 11, 580208(2020).
2) Lee A. T. et al., Antioxidants., 11, 92(2022).
3) Ramezani Ali Akbari F. et al., Acta Endocrinol., 15, 187–194(2019).
4) Meng X. et al., J. Biol. Chem., 291, 10625–10634(2016).
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© 2022 The Pharmaceutical Society of Japan
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