抄録
羊毛およびメタクリル酸メチル,アクリル酸メチル,およびアクリル酸エチルをグラフト重合させた羊毛繊維の構造と物性について,動的粘弾性,熱膨張, X線回折,電子顕微鏡などによって研究した。
動的損失弾性率-温度曲線における120°C, 60°C,および-50°C付近の極大をケラチン中のα結晶の融解,羊毛主鎖のミクロブラウン運動および側鎖運動に,それぞれ帰属させた。マトリックスや非ケラチン領域に存在する-CONH-結合数の約1/2は水素結合を形成しており,マトリックスの構造はかなりの規則性をもっていると考えられた。枝ポリマーのガラス転移温度は相当するホモポリマーのそれより若干高い高温側に移動した。枝ポリマーが2nm以下のドメインを形成すれば,そのガラス転移温度で損失弾性率の極大が観察されないことがわかった。羊毛と枝ポリマーの相互作用は枝ポリマーの種類によって異なる。