繊維学会誌
Online ISSN : 1884-2259
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繰り返し捩り応力下における製紙用単繊維の疲労現象
内藤 勉臼田 誠人門屋 卓
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1983 年 39 巻 1 号 p. T8-T13

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抄録
涙り振子法を用いて,製紙用パルプ単繊維の疲労現象を検討した。湿潤繊維に繰り返し捩り応力を加えるとその回数に応じて捩り剛さは段階的に減少し,対数減衰率はいくつかのピークをとりながら増加し破壊直前に著しい増加を示すことを認めた。一方乾燥繊維では繰り返し捩り応力による捩り剛さや減衰率の変化はわずかであった。このような現象を解析するため材料の疲労に関する確率過程的な取扱いを導入し考察を行なった結果,湿潤繊維では1回の繰り返し応力に対する破断の確率は一定値を示し,繊維に撫える捩り角および荷重によってその確率が変化することが認められた。一方,乾燥繊維や乾湿燥り返し処理をした繊維では破断の確率は一定でなく湿潤繊維と疲労破壊の機構が異なることを認めた。またクラフトパルプと亜硫酸パルプの繊維を比較すると前者は高い疲労寿命があり,捩り応力や荷重を増加させると後者の疲労寿命が著しく低下した。以上の結果より,乾燥処理やパルプ化法の違いが繊維の潜在的欠陥として疲労機構に影響を与えるものと考察した。
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