1986 年 42 巻 9 号 p. T534-T537
絹フィブロイン,とくに柞蚕絹フィブロインに対する室温下0.001N~0.01Nの希薄塩酸処理によって, X線結晶化度の増大と比重の低下が認められたが,重量の減少は無く,したがって,塩酸の吸着によって分子間のからみ合いが解舒し,準結晶領域は一部でX線的な結晶化が進むと共に,他の一部は非晶部へと転化することが考えられた。また, ζ-電位の絶対値は増加し,等電点は若干アルカリ側へとシフトしているので,処理による主鎖の切断は無いが,イオン解離し易い状態となっていることがわかった。
有限染浴における酸性染料の吸尽率は,処理によって増大したが,これは非晶部の増加と,吸着イオンによるカチオン化に対応するものである。