布の変形は微小領域でのクリンプ変形と,大変形領域での糸自身の伸長変形によるものとに大きく分けられる。この挙動は応力-歪曲線を測定することにより解析されてきた。しかし,布の局所的な内部歪やその動的な挙動,また糸自身の伸長がいつ始まるか等の解析に対しては適切な測定法ではない。布は二次元的な格子構造をもち,変形に対してこれら格子の幾何学的形状が変化する。この変化を光の回折現象を利用してとらえ,上の問題を実験的に検討することを目的とした。
回折強度分布の測定から平均の糸の配列周期が1%の精度で,また伸長下での糸の平均周期のゆらぎが,標準偏差として2~8%の変化が得られた。伸長比に対して1次の回折強度が最大をとる点から,クリンプ糸自身の伸長の始まる点が,直接もとめられることを解析で述べ,実際にこれを実験で確認した。この点はクリンプ交換モデルの数値解から決まる点と一致していた。