抄録
脱アセチル化度の異なるキトサン膜を酢酸水溶液からキャスト法で調製した。塩化カリウムに対する膜電位からTeorell-Meyer-Sievers理論によって求めた膜の有効固定電荷密度および水和度は,予想に反して脱アセチル化度の増加とともに減少した。この挙動は非晶部の体積分率の低下により解離可能なアミノ基の数が減るためと推測された。同じキトサン膜で4種の単純無機塩についての透過係数を測定した。低い塩濃度においては透過速度はDonnan効果によって制限され,塩濃度とともに増加するが,高濃度においてはイオンの水和半径のみに依存する一定値となり,水和半径が大きいほど拡散係数は小さくなった。微多孔膜の透過速度は緻密な膜よりも数倍大きいが,その塩濃度依存性は類似していた。