抄録
一般にゴム状高分子膜の拡散係数の決定に適用されるtime-lag法(Dθ=l2/6θ, l:膜厚, θ:遅れ時間)をガラス状高分子膜の拡散係数の決定に用いる場合,真の拡散係数(D)との間に相異を生ずることが知られている。この違いは高分子膜の表面でのペネトラントの吸収には高分子鎖の配置替えが必要であり,高分子セグメント鎖が動くことができるゴム状態にあれば表面濃度は速やかに平衡濃度に達すると考えられるが,ガラス状態になると高分子セグメント鎖の運動が拘束され表面濃度が時間に依存して変化することに起因する。そこで表面濃度の時間依存性を考慮した境界条件を用いFickの策二法則を解くことで導かれた式によリガラス状高分子膜へのペネトラント拡散を検討した。得られた式は表面濃度の時間依存性の尺度として定義したα(=β12/D)の値が小さい場合,即ち高分子セグメント鎖の運動性が拘束されている場合, θの値がα→∞の場合と比較して大きくなることを示し,このαは高分子膜のTg及びペネトラントの種類に依存することが認められた。