繊維学会誌
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醋酸纎維素皮膜の延伸に關する研究
隅田 隆太郎
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1950 年 6 巻 5 号 p. 253-257

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抄録

纎維物質の延伸機構を明かにする目的で,アセトン可溶性第二次醋酸纎維素皮膜の延伸による諸性質の變化を吟味檢討し,更にそれら延伸物の收縮率を測定して,延伸の際分子間に滑りが起つているか,又如何程滑つているかの目安を提出した。其結果の要點は次の如くである。
(1) 乾熱延伸に於ても膨潤延伸に於ても,延伸方向に於ける強度及びヤング率は一般に延伸と共に増大する。又乾熱延伸に於て,同一延伸率で比較すれば延伸温度が低い程強度及びヤング率が大である。
(2) 伸度は乾燥・濕潤共1.5乃至2倍の延伸率の所で一度増加して後漸減の傾向を示す。膨潤延伸に就てはLohmanの醋酸人絹に關する報告があるが,彼は伸度に極大點を認めていない。之は醋酸人絹が或る程度分子の配列を起していて,我々の極大點より高延伸率の所のみを測定したものと推定される。
(3) 乾熱延伸の最適温度は230°C乃至235°Cである。
(4) 乾熱延伸に於ても膨潤延伸に於ても,分子間の滑りが相當程度起つている。
(5) 收縮物の強伸度測定より膨潤延伸物の膨潤劑中收縮物では,強度は殆ど不變であるに反し,伸度は顯著に大きくなり,伸度の極大點が高延伸率の方へ移行する。

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