抄録
本研究では16件の建築物室内で位相差顕微鏡法及び分散染色法による各種繊維数濃度を計測した。その内訳は、アスベスト含有ひる石吹付け7件、吹付け石綿1件、折板屋根用アスベスト含有断熱材1件、アスベスト含有パーライト吹付け1件、アスベスト含有吹付けロックウール2件、アスベスト含有建築材料の露出していない室内4件であった。各種繊維数濃度を比較した結果、建築物室内における総繊維数濃度(位相差顕微鏡法による)とアスベスト繊維数濃度(分散染色法による)は大きく異なっており、前者はおおよそ10倍以上の高い値を示すことが明らかとなった。したがって、建築物室内の総繊維数濃度の値からアスベストの危険性を判断する場合においては、アスベスト繊維数濃度との乖離について考慮する必要がある。