水産工学
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関門海峡早鞘瀬戸における小型漁船と通航船の行動パターンの解明
本村 紘治郎奥田 邦晴巽 重夫辻 啓介鎌野 忠中田 裕
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1998 年 35 巻 3 号 p. 215-221

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抄録

我が国沿岸海域には航路と漁場が重なる狭水道が多い。例えば,関門海峡早騙瀬戸付近海域は一般続行船の重要な通兢路であり,かつ,周辺の専業漁業者の良好な釣り漁場でもある。このような狭水道では,専業漁船,遊漁船などの小型漁船と航路航行を法的に義務づけられている通航船は,安全操業と安全航行の点で競合し,どちらか一方が阻害されても海難が発生しやすい。そこで,著者らは小型漁船と通行船の狭水道における行動パターンを把握する目的で,早輔瀬戸とその付近海域を対象として,海上交通の実態調査を行った。その結果,小型漁船と通航船の行動パターンは次のように解明された。 1)休日の小型漁船の操業隻数は平日の操業隻数より多い。また,平日には専業漁船が多く夕休日には遊漁船が多い。 2)早輔瀬戸の潮流が憩流のとき,小型漁船は早輔瀬戸に集中する。 3)早鞘瀬戸の潮流が強いとき,小型漁船は出港しない。操業を中止して帰港する。潮流が弱い水域に移動して操業を続けるのいずれかの行動をとる。 4)通航船の隻数は休日よりも平日にやや多い。 5)100総トン未満の通航船の時間的な隻数の変化は,潮流の流向流速の変化にあまり影響されない。また, 100総トン以上の通航船の隻数の変化についてはさらに詳しい観測が必要である。

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© 1998 日本水産工学会
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