水産工学
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強制遊泳によって疲弊したコイの心拍間隔時系列解析による生体負担度推定
小島 隆人,清水 誠添田 秀男
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2003 年 40 巻 2 号 p. 103-108

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抄録

魚類から導出される心電図を利用して,強制遊泳後に疲弊したコイの生体負担度を心拍数および連続的に 計測した心拍間隔の時系列解析から求められる指標ARAVによって定量的に表すことを試みた。ここで新た に導いたARAVは,心拍変動時系列を表す自己相関モデルの白色雑音部分の分散および自己相関部分の分散 との比によって相対的な心拍変動の大きさを表すものである。一般に安静状態の魚類の心拍間隔は均一では なく,むしろランダムに間隔の長さが変動しているため,このような状態ではARAVは十分大きな値をとる しかし,極度の疲労状態に陥った魚では心拍間隔がほぼ均一となるため, ARAVが極めて小さくなる。コイ を回流水槽中で1-3BL/s, 1-3h強制遊泳させ,遊泳前および遊泳終了3h後までの回復過程における心電 図を記録した。その結果,比較的低速(1BL/s)遊泳であっても,長時間(3h)遊泳するとARAVの値が小さ くなり,またその回復も遅れた。比較的高速(3BL/s)で短時間(1h)遊泳の後にもこのようなARAVの継続 的な低下が見られ,個体差の大きい心拍数だけでは表すことの出来ない極度の疲労状態を, ARAVを指標と して表せる可能性が示された。

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© 2003 日本水産工学会
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