抄録
海亀脱出装置の設計の妥当性を検証するために,定置網の中層箱網内で突き上げを行うアカウミガメの推
進力を推定した。海亀の推進力を計測した水槽実験の結果から,前肢のはばたき周波数f (Hz)と海亀の直
甲長 l( m)を用いて,はばたきによって生じた推進力ピーク値 FP( N)を推定する式 lnFP = 1.81lnf + 1.91lnl
+ 6.26 を得た。中層箱網内における海亀のはばたき周波数を背甲に装着したビデオカメラより取得して推
進力ピーク値を推定した結果,突き上げ時における推進力ピーク値の80% 以上が,脱出装置の扉が閉まろ
うとする力よりも大きかった。現有の海亀脱出装置は,海亀の脱出が十分可能な設計であった。