2024 年 60 巻 3 号 p. 117-124
本研究では,同じ形状のバケットを持つ軽量簡易グラブ採泥器とスミス–マッキンタイヤー採泥器の採泥効率について,実験室内の砂を敷設した円形水槽を用いて比較実験を行った。その結果,スミス–マッキンタイヤー採泥器の採泥率は約60.8%であった。一方,軽量簡易グラブ採泥器では,振動を与えて引き上げた場合の採泥率は約87.3%,振動を与えずに引き上げた場合は55.2%であった。また,軽量簡易グラブ採泥器の採集方法に関係なく,男女間で採泥効率に有意差が確認された。これは採泥器を引き上げる速さが採泥効率に影響を与えた可能性が考えられる。底生生物の採集にはバケット容量の約35%以上の採泥率が必要であることを考慮すると,本研究で比較したどの採集方法でも十分な採泥量を得られることを示しており,軽量簡易グラブ採泥器が野外調査における新しい調査方法の選択肢になると期待される。