2022 年 72 巻 1 号 p. 11-21
要旨:我々は2018年,本学の臨床実習(bedside learning:BSL)に「総合目標」「行動目標」「臨床推論目標」という教員と学生の双方が共有可能な3つの到達目標を設定し,さらにその到達度をお互いに振り返ることができるようオンライン学習管理システムMoodleを用いた新しい評価システムを構築した。それは,2016年に福島県立医科大学の医学部6年生とBSL担当教員を対象に行ったアンケートで抽出された本学BSLの問題点である「教員と学生双方の到達目標の認識不足」「準備不足のままBSLに臨む学生の受け身の姿勢」「学生の診療参加の乏しさ」を克服するための試みであった。そして今回,この新しい評価システムが果たして期待した通りに運用されているのか,抽出されたBSLの問題解決に寄与しているのか検証するために,2018年度の4年生が2020年度にBSLプライマリーコースを終了するまでの学生と教員による評価入力状況を調査し,新評価システムの有効性について教員アンケートを行った。その結果,新評価システムは全ての科で使用され,学生の自己評価にも利用されていたが,教員のフィードバック及び学生の振り返りコメントの入力頻度は限定的であった。また,ユーザー教員アンケートから,新評価システムの導入が教員の到達目標の認識を促したことが示唆された。一方,準備不足のままBSL実習に参加する学生の学習態度の改善には至らず,更なる対策が必要であることが明らかになった。