2019 年 17 巻 1 号 p. 38-42
【要旨】症例は 43 歳男性.24 歳時に 2 型糖尿病を発症,37 歳時に右母趾球に潰瘍を形成したため,外来で治療を受けていたが,軽快・再燃を繰り返していた.その後,41 歳時に右母趾背側基部に新たな潰瘍を形成し,過剰肉芽や潰瘍周囲の過角化も伴い,一部疣状の表皮変化を伴っていた.組織学的には,表皮突起は不規則に延長していたが,表皮細胞に異型性は認めず,ウイルス性疣贅を示唆する細胞質内封入体もみられなかった.臨床像,組織像より verrucous skin lesions on the feet in diabetic neuropathy(以下 VSLDN)と診断した.活性型ビタミンD3薬,副腎皮質ステロイド薬の外用で治療したが,改善が乏しかったため入院加療を行い,安静,医療用フェルトによる除圧,フットケアにより改善した.VSLDN は神経障害を有する糖尿病患者の足に生じる反応性の疣贅状局面を呈する皮膚病変で,過去の報告からも難治性であるが,本症例は除圧にて改善傾向が得られた.本疾患は報告も少なく,いまだ疾患概念も確立されていないことから,その臨床像を広く供覧することは,糖尿病足病変の患者の診療に従事する者にとって意義があると考えられたため,若干の考察を加えて報告する.