抄録
昨今、所有者不明土地問題に伴い民法・不動産登記法の改正や表題部所有者不明土地適正化法の制定など様々な法改革が実施された。これらは、相続未登記による多数共有者問題や字名義地の解消を目指すものであるため入会林野にも大きな影響を与える。本稿は、これらの法改革が入会権の存在を前提とした制度設計となっていないため、問題を解決せずに顕在化させるだけとなり、入会林野近代化法が必要とされる場面が逆に増えてくる可能性を主張する。さらに本稿は、2021年3月に行った都道府県の入会林野整備担当者全国アンケートの結果と森林経営管理制度や認可地縁団体化といった新たな政策動向の検討に基づき次の3点を主張する。第一に近代化法に基づく入会林野整備でも権利を持つ離村者につきどのような方法でどこまで探索や同意取得を行うべきかが明確ではないため、新たな立法に倣いこの点を明確化すべきである。第二に整備ノウハウが継承されていない県も多いため、担当者のネットワークづくりを再度構築していく必要がある。第三に生産森林組合が整備後の形態とはなりえないため、それ以外の法人の設立や社団の代表者名義での登記を司法書士や行政書士等の法専門家がサポートしていく必要がある。