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最適確率制御モデルを用いた貿易自由化の森林資源管理への影響分析
吉本 敦
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2004 年 3 巻 p. 103-124

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抄録

本研究では、不確実性下における森林所有者の意思決定の行動様式をシミュレーションできる最適確率制御モデルを用いて、貿易自由化に伴う木材価格の変化が如何に森林経営の持続性に影響を及ぼすかを分析した。まず、木材価格のダイナミックスを幾何ブラウン運動で描写し、そのドリフト項とボラティリティ項の変化による森林経営の持続性への影響ついてシミュレーション分析を行った。次に、先に自由化された牛肉の価格データを用いて、自由化が価格の特性(ドリフト項とボラティリティ項)にどのような変化をもたらすか検証した。最後に、これらの分析結果を踏まえて、今後木材貿易が自由化された場合に想定される森林資源管理への影響について検討した。分析の結果、木材貿易自由化に伴い、まず短期的ではあるものの市場価格のボラティリティが増加することが予想され、その結果、森林経営持続のための最低許容価格は減少することが予想された。仮に最低許容価格が減少すれば、最低許容価格と市場価格との間に乖離が生じ、その利ざやを狙った生産サイドの競争の激化が予測できる。そして、この競争の激化が市場価格を平均的に減少させるものと考えられ、最低許容価格を上昇させる結果になることが分かった。すなわち、生産サイドの経営継続が困難になる確率が増すものと考えられ、自由化に伴い、短期的には森林経営の持続が困難になる確率が高くなることが示唆された。

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