日本薬理学雑誌
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特集:イオンチャネル創薬―着眼点と新技術―
創薬標的の探索:評価のための基盤技術
橋場 周平
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2005 年 126 巻 5 号 p. 329-333

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抄録

ヒトゲノム解読の結果から明らかにされたイオンチャネル遺伝子数は約300~400種あると想定される.イオンチャネルは創薬標的分子の有力候補と考えられ新しいリガンドの発見が期待されている.市場に流通しているイオンチャネルを標的とする薬剤は年間約120億ドル以上の売り上げを誇り,イオンチャネルは有力な創薬標的である事を示している.今までは基盤となるゲノム情報や評価のためのアッセイ系が不足し,さらにHTS装置(例えば96穴以上のウエル数のプレートに対応した装置)が未開発であったため,イオンチャネル創薬はなかなか進展が見られていない.近年HTS化された様々な基盤技術によりイオンチャネル創薬の進め方に変化が見られた.ここでは,イオンチャネル創薬の現状を紹介し,それらの技術を生物学的情報量,スループット,感度,コストなどに着目して紹介したい.イオンチャネルアッセイの標準手法と位置付けられている電気生理法は最も生物学的情報量に富んでいる長所があるが,コストが高くスループットが悪いという短所がある.結合実験法,フラックスアッセイ法,蛍光色素法などは低コストでハイスループットである長所があるが,生物学的情報量が少ない短所がある.大規模リガンド探索を行う場合はコスト,スループットの面で有利な結合実験法,フラックスアッセイ法,蛍光色素法などの一次スクリーニングで絞り込み,生物学的情報量の多い電気生理法で詳細に二次スクリーニングを行うと良い.さらに,アフリカツメガエル卵母細胞発現系と培養細胞発現系の特徴を比較した結果,発現系によって一長一短があるため,1種類の発現系で全ての種類のイオンチャネルアッセイを行うことは得策でなく,相補的な関係で活用する事を提案する.

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