日本薬理学雑誌
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特集:若手研究者が切り拓く,男性泌尿生殖器疾患の最新研究
  • 相澤 直樹, 横西 哲広
    2022 年 157 巻 3 号 p. 163
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル 認証あり
  • 相澤 直樹
    2022 年 157 巻 3 号 p. 164-167
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル 認証あり

    前立腺は男性の尿道を取り巻くように存在する腺組織である.代表的な疾患に前立腺肥大症があり,加齢とともに罹患率が増大することが知られている.我々はこれまで,前立腺肥大症のモデル動物である膀胱出口部部分閉塞のラットモデルを用いて検討してきた.その結果,筋原性由来の膀胱微小収縮の増大に伴って,膀胱求心性神経の活動が間歇的に増減していることを見出し,前立腺肥大症に伴う膀胱蓄尿機能障害,特に尿意切迫感の発生機序解明に寄与する可能性を示してきた.さらに,治療薬として上市されている薬物の薬理学的検討をすすめ,この病態に対する薬物治療において薬理作用の知見を集積してきた.また,前立腺炎も前立腺の代表的疾患に挙げられる.この中で,感染が確認されないにも関わらず,長期的に骨盤部の疼痛や不快感を有する場合,慢性非細菌性前立腺炎と診断され,前立腺炎患者の9割を占めるとも言われている.慢性非細菌性前立腺炎においても,膀胱蓄尿機能障害に起因する症状を訴える場合があり,この病態発生機序は解明されていない.我々は,起炎物質であるカラゲニンを用いて,慢性前立腺炎モデルラットを作成し検討してきたが,少なくとも膀胱求心性神経活動に及ぼす影響は限定的であった.このことから,慢性非細菌性前立腺炎でみられる膀胱蓄尿機能障害の背景には,前立腺肥大症のような別の疾患が関わっている可能性が示唆された.

  • 横西 哲広
    2022 年 157 巻 3 号 p. 168-171
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル 認証あり

    がん治療の晩期合併症として不妊症がある.小児がんの治療成績が向上し,がん克服者の寿命がのびた現在では,QOLを低下させる不妊症は大きな問題となっている.生殖腺毒性への姑息的な対応がされてきたが,卵巣組織凍結保存の自家移植による挙児の成功から,女性の妊孕性の温存法は確立されつつある.その一方で,男性の妊孕性の温存法として,精液凍結保存があるが,性成熟した男性患者にしか適応はない.若年の男性がん患児の妊孕性の温存法として,精巣組織や精巣細胞を用いて,精原細胞から精子まで分化誘導する基礎研究が行われてきた.さらに近年では,マウスやヒトの多能性幹細胞から生殖細胞を分化誘導するなどの飛躍的な発展を遂げている.本文では,これまでの性未成熟な精巣検体からの精子形成誘導の試みと,新たな可能性としての精原細胞ニッチの再構築法を紹介する.

  • 堀田 祐志, 森 泰毅, 木村 和哲
    2022 年 157 巻 3 号 p. 172-175
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
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    勃起の惹起・維持においてもNOが関わることは古くから知られている.このためNO補充が勃起不全(ED)治療として有用と考えられ多くの試験がなされてきた.しかしながら,様々な理由から上市できておらず,本邦では下流のホスホジエステラーゼ-5(PDE-5)を標的としたPDE-5阻害薬が唯一の経口治療薬となっている.NO補充療法の問題点のひとつとして全身性の副作用があげられる.この問題を解決するため,我々は光応答性NOドナーに着目しED治療に応用可能か検討を進めることとした.光応答性NOドナーは,大きく3つの特徴を有する.1つ目は,光を照射した部位でのみNOを放出すること,2つ目は,光を照射している時間のみNOを放出すること,3つ目は光強度に応じてNO放出量を制御できることである.これらの特徴から,光応答性NOドナーと光照射はED治療に有用な治療法になることが予想される.我々は光応答性NOドナーの開発に取り組んできており,これまでに青色光応答性NOドナー「NOBL-1」,黄緑色光応答性NOドナー「NO-Rosa」,赤色光応答性NOドナー「NORD-1」,を開発し生体組織への応用を検討してきた.最近の研究からNORD-1と赤色光を使うことでラットの勃起反応をin vivoレベルで増強することができることを見出した.そこで,既存ED治療薬の効果が低いとされる神経性EDモデルを用いてNORD-1と赤色光の効果を検討した.その結果,神経性EDモデルにおいてもNORD-1投与後の赤色光照射により勃起反応が増強され,優れたED改善効果が観察された.これらの結果から,ラットにおいて光応答性NOドナー「NORD-1」と赤色光は勃起反応を増強できED治療薬としての可能性が示唆された.今後,化合物の至適化や安全性試験などクリアーすべき課題は多々残されているが,EDを対象としたフォトバイオセラピーという新たな治療アプローチが開発されることが期待される.さらに,NOは身体の様々な箇所で作用するため,EDだけでなく他疾患への応用も今後期待される.

  • 竹井 元
    2022 年 157 巻 3 号 p. 176-180
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル 認証あり

    ヒトを含む哺乳類の精子は,受精能獲得と総称される一連の生理学・生化学的なプロセスを経なければ卵と受精することが出来ない.受精能獲得に伴い,精子の鞭毛運動は通常の活性化状態から,鞭毛の屈曲が非常に大きいむち打ち状の運動である超活性化状態へと変化する.近年,受精能獲得,特に超活性化を向上させる処理を精子にすることで,体外受精率が向上し,さらにその後の胚発生率まで改善することが明らかになった.すなわち,超活性化は体外受精などの生殖補助医療の改善を考える上で有力なターゲットとなる.それにも関わらず,超活性化の制御機構は未だに明らかとなっていない.筆者は,超活性化の制御機構について,イオンやチャネル・トランスポータの側面から解明することを目指し,研究を行っている.体外受精用の培地と卵管内のNa濃度,K濃度が大きく異なることを見出したことから,これらイオン濃度の違いが受精能獲得,特に超活性化に与える影響について,超活性化運動が観察しやすいハムスターの精子を用いて調べた.その結果,細胞外Naによって超活性化運動の発現が抑制されており,その制御にはNa/Ca2+ Exchangerが関わることが分かった.さらに,細胞内外のNa恒常性を制御する上で中心的な分子であるNa/K ATPaseの精巣特異的なアイソフォームであるα4が,超活性化運動の発現に伴う鞭毛の波形変化に必須であることが明らかとなった.その一方で,細胞外K濃度を卵管内と同等の20 mMまで上昇させると,膜電位は脱分極するが,超活性化には大きな影響がないことが分かった.これらの結果は,細胞外のNa濃度及びその制御に関わる一次・二次性能動輸送に関わるトランスポータが,膜電位の制御を介さずに超活性化を制御すること,またそれらトランスポータが生殖補助医療の改善へ向けた有力なターゲット分子となることを示唆する.

特集:精神・神経疾患の機能解析イノベーション ~分子レベルから in vivo 可視化まで~
  • 塩田 倫史, 清中 茂樹
    2022 年 157 巻 3 号 p. 181
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル 認証あり
  • 塩田 倫史
    2022 年 157 巻 3 号 p. 182-186
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル 認証あり

    私達はDNA・RNA高次構造に着目し,それらの脳機能における役割の解明を目指して研究を進めている.DNAは,右巻き二重らせんであることがWatson博士とCrick博士によって1953年に発見された.このDNAの基本的な構造は「B型DNA」と呼ばれる.実は,一般的に知られているこの右巻き二重らせん構造以外にも,ヘアピン・左巻き・三重鎖・四重鎖など「非B型DNA」と呼ばれる高次構造が存在する.また,これらは神経機能において重要な役割を担うことが示唆されている.非B型DNAのひとつであるグアニン四重鎖(G-quadruplex:G4)構造は,グアニンが豊富な配列領域の一本鎖DNAもしくはRNAで形成される.バイオインフォマティクス解析では,ヒトゲノム中の約300,000箇所でG4構造の形成が予測されており,テロメア,遺伝子プロモーター,リボソームDNAおよび組換えホットスポットに特に多く見られる.私達はこれまでに,① G4構造が神経細胞内に豊富に形成され,神経発達依存的にその形成が変化すること,② G4構造の異常が認知機能障害を引き起こすこと,③ 既承認医薬品の中からG4構造に作用する安全性の高い薬剤を同定し,その薬剤によりG4構造結合タンパク質の遺伝子変異マウスと患者における認知機能低下が改善されること,④ グアニンリッチ・リピート病ではG4構造がプリオノイドを促進すること,などを報告してきた.本稿では,これまでに私達が報告してきた神経疾患におけるG4構造の細胞内機能についてまとめると共に,G4構造の神経疾患治療標的としての可能性について述べる.

  • 片山 雄太
    2022 年 157 巻 3 号 p. 187-190
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
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    自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)はコミュニケーション障害や行動の限局性を特徴とする発達障害であり,その高い有病率から近年社会的な注目が高まっている.しかしASDの病態は多様であり,発症には多くの原因遺伝子や環境要因の関与が疑われることから,病態の理解は未だ不十分な点が多く残っている.そこで発症原因の切り分けと単純化が可能なモデル動物を用いた解析は理解の助けになると考えられる.本稿では信頼性の高い原因遺伝子候補であるCHD8の遺伝子変異を再現したモデルマウスを用いた解析から明らかになったASDの発症メカニズムを紹介し,ここから予測される治療標的の可能性について議論したい.

  • 杉原 佑太朗, 小島 憲人, 清中 茂樹
    2022 年 157 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
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    AMPA型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)は,興奮性神経伝達において中心的な役割を果たす.ポストシナプス膜上において,AMPA受容体の発現量や動態は厳密に制御されており,その変化は記憶・学習と深く関連する.これまでにもAMPA受容体の動態解析を目的としたラベル化・可視化法が報告されてきたが,それぞれの手法において問題点を抱えていた.例えば,遺伝子工学的に蛍光タンパク質を融合する方法では受容体機能への影響が懸念される.また,生化学的な手法である細胞表面ビオチン化法では膜タンパク質が網羅的に修飾されるため,解析時に煩雑な精製ステップが必要である.そのような背景の下,我々は,リガンド指向性化学と名付けられたタンパク質ラベル化法を用いて,神経細胞に内在するAMPA受容体の蛍光ラベル化に成功した.実際に,培養神経細胞や脳スライス切片でのAMPA受容体選択的な蛍光ラベル化を実現したが,蛍光色素ラベルに数時間を要するため,AMPA受容体の詳細な動態解析を行うことは困難であった.それを踏まえて,迅速かつ細胞表層選択的に蛍光色素を標識するため,我々は,リガンド指向性化学と生体直交反応である逆電子要請型ディールズアルダー(IEDDA)反応を組み合わせたリガンド指向性2段階ラベル化法を新たに開発し,長期間に渡るAMPA受容体の動態評価が可能となった.実際に,培養神経細胞において,シナプス膜上においてAMPA受容体の寿命が非常に長いことや,リサイクリングが迅速に起こっていることを明らかにした.リガンド指向性2段階ラベルは,AMPA受容体に限らず,他の受容体にも広く応用可能であるため,受容体動態解析の強力なツールになると期待される.

  • 宮﨑 智之
    2022 年 157 巻 3 号 p. 196-199
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル 認証あり

    興奮性グルタミン酸AMPA受容体は脳内情報伝達の最重要分子である.発表者らはヒト生体脳でAMPA受容体を可視化するPET薬剤([11C]K-2)の開発に世界で初めて成功した.精神神経疾患患者のAMPA-PET撮像により,疾患の分子病態を疾患横断的に明らかにし,その表現型に基づいた疾患動物モデルの作出,最適化,解析を行ってきた.こうした基礎・臨床の融合研究により,複数の精神神経疾患の生物学的基盤を確立できると期待される.これまでヒト生体でAMPA受容体を可視化できず,適切な対象疾患・患者が絞れないことにより世界的に開発が滞ってきたAMPA受容体を標的とした治療法の開発がAMPA-PET薬剤の応用により可能となり,「AMPA受容体を見て,治療する」という分子レベルのエビデンスに基づいた革新的診断治療法開発の礎を作ることが出来ると期待される.

創薬シリーズ(8)創薬研究の新潮流51
  • 相﨑 健一, 小野 竜一, 菅野 純, 北嶋 聡
    2022 年 157 巻 3 号 p. 200-206
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル 認証あり

    化学物質曝露によるマウスのトランスクリプトームを多数収録した“Percellomeデータベース”を構築し,毒性分子機序解明とそれに基づく毒性予測技術開発を進めている.急性毒性についてはトランスクリプトームの類似度から同様の反応を示す化学物質をリストアップし,それらの毒性情報から毒性予測が可能となっている.反復毒性については成立機序に関わるシグナルネットワークの解析に取り組んでおり,特にトランスクリプトームとエピゲノムの解析を同時に行って,ヒストン修飾やゲノムDNAのメチル化といったエピジェネティック機構が反復毒性機序へ与える影響の解明を進めている.また解析プロセスへのAI導入による解析規模の拡大や効率向上を試みており,反復毒性試験の短期間化やビッグデータに基づくin silico予測,及び省動物化したin vivo試験の組み合わせによる毒性予測などトキシコゲノミクスの本格活用を目指している.

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