日本薬理学雑誌
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特集:薬物依存性形成メカニズム解明に対する薬理学的アプローチによる最新研究
  • 新田 淳美, 金田 勝幸
    2020 年 155 巻 3 号 p. 129
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
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  • 古田島(村上) 浩子, 池田 和隆
    2020 年 155 巻 3 号 p. 130-134
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル 認証あり

    近年,アディクションに関する話題は広くメディアなどを通じ報道されており,社会からの関心・認識が高まっている.また,「アディクションを治療する」ことは臨床現場の重要な課題となっている.アディクションには根治のための治療法がなく,長期にわたる通院や入退院,再使用の繰り返しがアディクションの治療現場の実状である.これらの現状を鑑みると,アディクションの根治を目指した新たな治療法の開発が急務である.本稿では,著者らが治療薬開発のターゲットとして着目しているG-protein activated inwardly rectifying potassium(GIRK)チャネルと物質依存について概説し,現在実施しているGIRKチャネル阻害薬を用いた臨床研究を紹介する.これまで,依存性物質の作用機序において重要なGIRKチャネルは,動物及びヒトを対象とした研究で,実際に物質依存に関係するとの知見が蓄積されてきた.GIRKチャネルは報酬に関する脳部位などに分布しており,依存性物質がGタンパク質共役型受容体に結合するとGタンパク質によって活性化され,ニューロンの活動調整に寄与する.動物実験において,GIRKチャネルを阻害するイフェンプロジルを予め投与すると依存性物質によって引き起こされる行動が減弱することが報告されてきた.イフェンプロジルは安全性が高く,脳循環機能改善薬(保険適応)として臨床現場において長く使用されてきた.著者らは,イフェンプロジルをアルコール依存患者に3ヵ月間投与すると,アルコールの再使用スコアがコントロール群に比べて有意に減少することを前向きランダム化非盲検試験にて見出した.現在は,覚せい剤依存患者を対象としてイフェンプロジル投与を行うアウトカム探索的研究を二重盲検無作為化比較試験にて実施中である.将来的にはイフェンプロジルの効果の検証を他の依存性物質や行動嗜癖まで拡大し,患者の治療に貢献したいと考えている.

  • 金田 勝幸, 出山 諭司, 李 雪婷, 張 彤, 笹瀬 人暉
    2020 年 155 巻 3 号 p. 135-139
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
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    ストレスは麻薬や覚醒剤などに対する欲求を増強させる.薬物欲求増強は一旦中止した薬物を再摂取してしまう再燃につながると考えられることから,欲求増強に関わる神経機構の解明が重要である.薬物欲求には,腹側被蓋野,側坐核,内側前頭前野(mPFC)などから構成される脳内報酬系に加え,報酬系と密接に関わる脳幹の背外側被蓋核(LDT)が関与する.また,ストレス時には,mPFCおよびLDTでのノルアドレナリン(NA)レベルが上昇する.したがって,ストレスによる薬物欲求増強に,これらの脳部位でのNA神経伝達の亢進が関与している可能性が推測される.そこで,コカイン条件付け場所嗜好性試験(CPPテスト)に拘束ストレス負荷を組み合わせる実験系を考案し,この仮説を検証した.ポストテスト直前に拘束ストレスを負荷することで,CPPスコアの有意な増大,すなわち,コカイン欲求の増強が認められ,この増強はLDTへのα2あるいはβ受容体拮抗薬の局所投与により抑制された.さらに,コカイン慢性投与後の動物から得たLDTニューロンでは,NAにより抑制性シナプス後電流が抑制されたことから,コカイン摂取により抑制性シナプス伝達に可塑的変化が誘導され,これが,LDTニューロンの興奮性を増大させることが示唆された.一方,NAはα1受容体を介してmPFC錐体ニューロンの興奮性を上昇させた.また,mPFCへのα1受容体拮抗薬の局所投与はストレスによるCPP増大を抑制し,さらに,薬理遺伝学的手法によりmPFC錐体ニューロンの活動を選択的に抑制することによっても,ストレス誘発性CPP増大は減弱した.以上の結果から,ストレスにより遊離の亢進したNAがLDTおよびmPFCニューロンを活性化させることで,コカイン欲求行動を増強させると考えられる.したがって,NA神経伝達の制御が,再燃に対する治療薬・治療法の開発につながることが期待される.

  • 新田 淳美
    2020 年 155 巻 3 号 p. 140-144
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
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    薬物乱用は世界的に大きな問題となっている.しかし,使用される薬物や物質毎で,生体内ならびに脳内での作用点が異なることから,その原因の解明が難航しているのが,現状である.我々は,覚醒剤メタンフェタミンに対する生体内分子の生理機能の解明に焦点を絞って,研究を行っている.覚醒剤メタンフェタミンを6日間連続投与されたマウスの側坐核を用いて,cDNAサブトラクション法で,コントロールマウスと比較してmRNAの発現量が20倍以上に増加している分子を複数個見出すことに成功した.その中に含まれていた分子としてShati/Nat8l とTMEM168がある.Shati/Nat8lのcDNAを組み込んだアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターをマウスの側坐核または前頭前皮質に注入し,Shati/Nat8lの発現量を増加させると場所嗜好性や運動量の増大等の覚醒剤の薬理効果は低減される.この時,側坐核からのドパミンの遊離量が減少をしており,Shati/Nat8lの最終産生物であるNAAGは,mGluR3のアンタゴニストのLY341495を末梢投与すると,覚醒剤の薬理作用に対するShati/Nat81の効果は制御された.これらのことから,mGluR3を介した新しい薬物抑制作用を見出した.また,前頭前皮質のShati/Nat8lの増加は側坐核へのグルタミン酸神経系を抑制し,側坐核のドパミン遊離量を調節することも分かっている.一方,TMTEM168もAAVを使用して側坐核で発現量を増加させると覚醒剤による場所嗜好性や運動量の増加が抑制された.TMEM168は,オステオポンチンと結合し,インテグリン受容体を制御し,ドパミン遊離を抑制するメカニズムも明らかになっている.覚醒剤依存の形成メカニズムの解明は,ほとんど進んでいない.脳機能は多くの分子や神経回路が複雑に組み合わさっているところであるが,このように,個々の分子,1つ,1つの生理活性を解明することが,メカニズム解明や治療方法の確立につながることを期待する.

  • 大木 雄太
    2020 年 155 巻 3 号 p. 145-148
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
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    アルコールは,身近に存在する嗜癖性を有する物質であり,多量飲酒はアルコール依存症の発症につながりうる.アルコールをはじめ依存症形成に共通して重要と考えられているのは,脳内の報酬系回路といわれる中脳腹側被蓋野から側坐核に投射するドパミン神経系の活性化であり,側坐核におけるドパミンの遊離により快の情動が生じる.アルコール依存症においては,内因性オピオイドとその受容体であるオピオイド受容体が報酬系回路の制御に重要な役割を果たす.アルコールを摂取すると,腹側被蓋野や側坐核においてβ-エンドルフィンやダイノルフィンなどの内在性オピオイドペプチドが遊離される.β-エンドルフィンはμオピオイド受容体を活性化し,報酬系回路を賦活することで,正の強化効果を生じさせる.一方で,ダイノルフィンはκオピオイド受容体を活性化し,負の強化効果を生じさせる.アルコールによるオピオイド受容体を介したこれらの作用が,アルコールの摂取欲求を高め,アルコール依存症に関与すると考えられている.ナルメフェンはオピオイド受容体調節薬であり,オピオイド受容体に作用することで,報酬系回路を制御し,アルコール依存症患者における飲酒量低減効果を示すと考えられている.アルコール依存症の治療の原則は,断酒の継続であるが,近年は,ハームリダクションの概念が提唱され,ヨーロッパでは2013年からナルメフェンが飲酒量低減薬として使用されてきた.日本においても,アルコール依存症治療における飲酒量低減を治療目標に加えることが,2018年の治療ガイドラインにより示された.本総説では,最初に,アルコール依存症における脳内報酬系回路とオピオイド受容体との関連についてまとめ,次に,ナルメフェンの薬理学的作用について,非臨床試験及び臨床試験の結果をまとめる.

特集:先端的バイオ医薬品を目指した薬理学研究の新たな展開
  • 西堀 正洋, 谷内 一彦
    2020 年 155 巻 3 号 p. 149
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル 認証あり
  • 加藤 幸成
    2020 年 155 巻 3 号 p. 150-154
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル 認証あり

    がん細胞に対する抗体医薬開発を行う場合,がん細胞に特異的な抗体でなければ正常組織への毒性が常に懸念される.過去の抗体医薬開発の戦略を振り返ると,オミックス解析を用いてがん/正常比が高い抗原を狙うことが多く,がん細胞に高発現の膜タンパク質であったとしても,正常組織にも高発現している場合は標的候補分子から外されてきた.がん/正常比が高く,かつ正常組織の発現レベルが低い新規標的分子は現在枯渇しており,新たな抗体医薬を開発するのが困難な状況が続いている.そこで製薬会社を中心として,すでに抗体医薬が存在する標的分子に対し,抗腫瘍効果のさらに高い抗体医薬開発や,抗体薬物複合体(ADC),キメラ型抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法,二重特異的抗体を用いたT細胞誘導療法など,種々のモダリティへの応用研究が活発化している.この現状を打開するためには,標的分子ががん細胞と正常細胞に同等に発現していたとしても,がん細胞の標的分子のみに特異的に反応するモノクローナル抗体を樹立する技術が必要である.我々はこれまで,がん特異的糖鎖を発現する細胞株や独自開発のアフィニティータグシステムを駆使することにより,がん特異的抗原を大量に作製するプラットフォームを開発した.フローサイトメトリーや免疫組織染色のスクリーニング法を最適化することにより,がん特異的抗体の樹立法(CasMab法)を確立した.また,免疫やスクリーニングに細胞株のみを使った細胞基盤免疫選択法(CBIS法)を開発し,精製が困難なタンパク質に対する抗体を迅速に作製できるようになってきた.がん特異的抗体の開発は,がん患者に対する副作用を限りなく低減させるだけでなく,抗体医薬を開発する企業にとってもリスクが少なく,今後のバイオ医薬品の開発にとって重要な課題である.本稿では,がん特異的抗体開発の戦略を,いくつかの実施例を使って紹介する.

  • 和氣 秀徳, 西堀 正洋
    2020 年 155 巻 3 号 p. 155-158
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル 認証あり

    Histidine-rich glycoprotein(HRG)は主に肝臓で産生される約75 kDaの血漿糖タンパク質で,ヒト血漿中に60~100 μg/mlの比較的高濃度で存在する.これまでの研究により,HRGは様々な凝固・線溶・免疫・炎症関連物質や細胞に結合し,敗血症病態時の生体反応調節を行っていることが明らかとなっている.したがって,血漿HRGレベルの低下は,凝固・線溶系や免疫系の調節不全を引き起こし,最終的に敗血症性の播種性血管内凝固症候群や多臓器不全を誘発する.本稿ではHRGの生理的機能とHRGの敗血症マーカー・治療薬としての可能性に焦点を当て解説する.

  • 原田 龍一, 盛戸 貴裕, 谷内 一彦
    2020 年 155 巻 3 号 p. 159-163
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル 認証あり

    ポジトロン断層撮影法(PET)による分子イメージングはポジトロン放出核種で標識された放射性薬剤(=PETプローブ)を,臨床的に薬理作用を示さない極微量(~数μg)で生体に投与し,薬剤から放出される消滅ガンマ線の分布を3次元に画像化する技術である.PETは標識化合物の薬物動態評価の他に標的分子に直接作用したか(target engagement:proof-of-mechanism(POM)),治験の対象者はその分子標的が陽性なのか(patient selection),そしてアウトカムとして生体における変化をもたらしたのか(biomarker)などの情報を得ることが可能なため医薬品開発においても利用されている.従来,医薬品などの低分子化合物をC-11,F-18といった短半減期核種で標識し,PETプローブとして利用されてきたが,近年のバイオテクノロジー技術の発展によりそれらの標識による新しいPETプローブが登場している.抗体は高分子であるが故に薬物動態も遅く,その時間にあった長半減期の放射性金属(Cu-64,Zr-89など)を利用する.しかし,バイオマーカーとしての利用の場合,複数のPET検査を行うので被爆という観点からも薬物動態が速く,短半減期の核種(C-11,F-18)で標識することが望ましいと考えられる.そうした観点から,薬物動態に優れたダウンサイジングされたタンパク質リガンドであるaffibodyなどが開発され,PETプローブとして報告されている.著者らはこうした中分子のタンパク質リガンドを標識するユニークなポジトロン放出核種標識タンパク質の合成法の開発を行ってきた.その手法は,無細胞タンパク質合成法とポジトロン放出核種標識アミノ酸を用いて生化学的にタンパク質をビルドアップ式に合成するというものである.本稿では,抗体と次世代のリガンドとして注目されている中分子のタンパク質リガンドのaffibodyのPETプローブに関するトピックとその合成法について紹介する.

特集:Cardio-oncology の潮流と新たな展開
  • 上園 保仁, 諫田 泰成
    2020 年 155 巻 3 号 p. 164
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル 認証あり
  • 野中 美希, 上野 晋, 上園 保仁
    2020 年 155 巻 3 号 p. 165-170
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル 認証あり

    近年,がんサバイバーの増加とともに,今まで顕在化していなかったがん治療による晩期障害やがん自身によって起こる障害が深刻な問題となっている.抗がん薬や分子標的薬の中には,生命維持に重要な臓器である心臓に障害を与えるものがあること,さらにがん自身によっても心機能障害が起こることが明らかとなり,がん治療における心機能の安定維持が注目されているが,心機能障害発症のメカニズムについてはほとんど不明である.我々は最近,進行がん患者の約80%に出現しがん死因の約20%を占めるとされるがん悪液質を発症する動物モデルを確立した.がん悪液質患者では心機能が低下するとされているが,ヒトと同様のがん悪液質を発症する適切なモデルが少ないため,がん悪液質と心機能の関係については未だ不明な点が多く,解析はほとんど行われていない.そこで本研究では,当研究分野で開発したがん悪液質モデルマウスの心機能の評価を行い,さらにその治療法として自発運動による治療効果を検討した.ヒト胃がん細胞由来である85As2細胞をマウスの皮下に移植することにより,悪液質の指標となる体重,骨格筋重量,摂餌量の低下が観察された.さらに,悪液質の進展とともに,心筋重量が有意に減少し,左室駆出率(LVEF)も低下した.また,回し車による自発的運動により,85As2移植がん悪液質マウスの摂餌量,骨格筋重量の低下が抑制され,さらに心筋重量の減少の抑制ならびにLVEFの改善も認められた.以上のことから,85As2移植がん悪液質マウスは心機能障害を伴っていること,さらに自発運動は悪液質症状のみならず心機能障害も改善する効果があることが明らかとなった.一般に心不全症状の改善を目的に運動療法が導入されていることは知られているが,本研究により,がん悪液質によって誘発される心機能障害に対しても運動療法が治療効果を発揮する可能性が示唆された.

  • 佐塚 文乃, 諫田 泰成
    2020 年 155 巻 3 号 p. 171-174
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル 認証あり

    医薬品開発において心毒性評価は重要であり,さらに予測性の高い手法が望まれる.ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた催不整脈リスク評価法が開発され,国内外のコンソーシアムによる検証を経て,昨年秋よりICHでの議論が開始された.近年,がん治療の進歩により患者の生命予後が延長したこと,新たな作用機序を有する分子標的治療薬が登場をしたことなどにより,抗がん薬による心筋障害,冠動脈疾患,不整脈,高血圧症等の循環器系有害事象が注目を集め,cardio-oncologyと呼ばれる学際領域の重要性が増している.抗がん薬による心毒性に対しても,ヒトiPS細胞由来心筋細胞による評価が期待されている.そこで我々は,抗がん薬による左心室機能障害に着目し,インビトロ評価法の開発に取り組んだ.ヒトiPS細胞由来心筋細胞の動きを高解像度カメラで取得した画像の解析により,収縮・弛緩を評価できる新たなイメージング評価法を開発した.また,陽性対照となる抗がん薬による心毒性を評価できることを見出した.本総説では,抗がん薬による心毒性の評価の必要性や心筋障害(心筋収縮力低下)の評価法に関して最新の研究や国際動向,将来展望について紹介したい.

  • 細田 洋司
    2020 年 155 巻 3 号 p. 175-178
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル 認証あり

    生命の遺伝情報を担うゲノムDNAは外来内因の物理的化学的因子によって絶え間なく損傷を受けており,細胞はDNA損傷応答とその修復機構を発達させDNAの安定性を維持している.心臓の虚血性変化や圧過負荷に伴う心不全発症の増悪に心筋細胞のDNA損傷応答・修復機能の障害が指摘されている.がん治療によって引き起こされる心毒性は,がんの予後とは関係なく患者の心血管発症リスクを高めQOLに強い影響を与えるため,臨床的かつ社会的に問題となっているが,その発症メカニズムは不明な点が多い.筆者らはこれまでの検討から,抗がん薬による心毒性の発現においても心筋細胞のDNA損傷がその要因の一つであることを見出している.具体的には,抗がん薬投与マウスにおいて心筋細胞のDNA損傷応答反応が認められること,DNA損傷応答に一致してDNAメチル化と転写制御の変化,抗がん薬誘導細胞死にDNAメチル化修飾が関与することである.臨床知見として抗がん薬治療による血中BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の一過性低下を報告しており,これを支持する実験データとして抗がん薬投与したマウス心筋においてDNAメチル化とBNP転写抑制の関連性も明らかにしている.心筋細胞のDNA損傷応答・修復機能に基づいた抗がん薬性心毒性の病態の理解や心不全発症機序の解明に関する新たな知見は,DNA修復シグナルを標的とした治療薬の開発につながるものと思われる.

  • 佐瀬 一洋
    2020 年 155 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル 認証あり

    超高齢社会を迎え,がんは身近な病気となったものの,医学の進歩に伴いがんサバイバーの数が急増しつつある.従来から抗がん薬や放射線治療による心毒性には細心の注意が払われてきたが,新たに登場した分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬等では多種多様な病態が報告されるようになり,がん治療関連心血管疾患(cancer treatment-related cardiovascular disease:CTRCD)としてその対策が急務となっている.腫瘍循環器学(cardio-oncology)は,がん患者の生命予後向上とQOL改善を共通の目標とする,学際領域の連携である.既に欧米では,まず臨床ニーズとして医療現場におけるCTRCDへの対応に関するチーム医療が,次に研究シーズとして国や学会レベルにおける対応を踏まえたトランスレーショナル・リサーチが発展しつつある.本稿では,腫瘍循環器学の現状と今後の課題について,国内外における最新の研究ポートフォリオ分析を含めて概説する.

連載:これからの薬理学教育を考える
新薬紹介総説
  • 永井 将弘, 服部 信孝
    2020 年 155 巻 3 号 p. 187-194
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病は主に運動緩慢,振戦,強剛及び姿勢保持障害が運動症状として現れる神経変性疾患であり,病理学的特徴として黒質ドパミン作動性ニューロンの脱落による線条体ドパミン量の減少が挙げられる.パーキンソン病の治療は対症療法であるドパミン補充療法が中心となっており,モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬を投与する治療では線条体でのドパミン代謝を阻害して脳内ドパミン濃度を増加させることによりパーキンソン病の症状を改善する.ラサギリンは強力かつ特異的なMAO-B阻害薬であり,抗パーキンソン病薬として現在,米国,欧州を含む世界50ヵ国以上で承認されている.国内で実施された臨床試験では,早期パーキンソン病患者に対するラサギリン単独療法の有効性がMovement Disorder Society-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale Part II(日常生活で経験する運動症状の側面)及びPart III(運動症状の調査)を用いて評価され,抗パーキンソン病作用を有することが示された.さらに,レボドパ服用中の進行期パーキンソン病患者においては,ラサギリンの併用投与によりウェアリングオフ現象におけるオフ時間の短縮効果が認められている.これらの国内臨床試験の結果より,早期及び進行期パーキンソン病日本人患者に対するラサギリンの有効性が示され,2018年3月にパーキンソン病を適応症としてラサギリンメシル酸塩(アジレクト®錠)の国内製造販売が承認された.本総説では,本邦におけるラサギリン使用の理解を深めることを目的として,ラサギリンの薬理学的特徴及び国内試験結果を中心とした臨床効果について包括的に概説した.

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