日本薬理学雑誌
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総説
アルツハイマー病に対するワクチン療法研究の進展
松本 信英田平 武
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2009 年 134 巻 2 号 p. 59-63

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抄録

アルツハイマー病(AD)は認知機能が次第に低下していく神経変性疾患である.これまでの研究から,アミロイドβ(Aβ)と呼ばれる凝集性の強いペプチドが病因として関与していることが実証され,現在ではこの脳内Aβの増加・凝集・蓄積がAD発症の引き金を引くという「アミロイド仮説」を基盤として,様々な治療法の開発が行われている.その先駆けとなったワクチン療法は,Aβを有害な侵入者に見立て患者の免疫系を利用して排除するという画期的な方法として注目された.ワクチン療法はモデル動物を用いた実験では良好な結果を示したが,ヒトでの治験は副作用の出現により中止され,その後の追跡調査では,ワクチン接種によりAβの蓄積は軽減されるが認知機能の低下は食い止められなかったという残念な結果が報告された.本稿では,これまでの研究から得られた知見を概説し,これからのワクチン療法の可能性について考察したい.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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